<806>「物語に蹴られた」

 あなたに会うとき、ゴボゴボと音のする。

 音から見たあなたに憧れ。

 それは空気、空気の騒乱、空気の別れ。

 期待と同程度、期待と同程度の微笑み。

 あなたには似合う。全体として、いつも顔の。

 意味もなく上を見、ひとりごとを呟く。考える時間に入る、ちょうど別の時間がなだれこんだだけとも、言う、のち微笑み。期待にふたつに重なる程度、それからまた分からない。

 私が、音として情けないと思うとき、それぐらいの声はする。

 いつもの、透明な閃き、その姿によりかかる。

 例えれば、午前に囁き、暮れ方には見損なう、などの。

 遅れて呼ばれると、子どもらしさ、そのまま通りへ結ぶ。(掛)駆け声は絡み、まどろみ、未完成へ転ぶ。

 私の、声が駆ける方へ、隠れ家、隠れ家のあり、それはもう、ほとんど連続。途端に思考は薄くなる。

 ふざけた、隠れ方で一切を短、時間のなかへ詰め込み、範囲から逃げる。観察から逃げる。今は、めちゃくちゃな話をも、自分の、なか、に入れなければならない。

 ストーリー、あなたを蹴飛ばす。あなたはストーリーに蹴飛ばされた。

  なるほど

 そういうことか、という一切れとともに、オりていく、どころかオりていく・・・。

 私は、一番重たいものを抱えて、走るのが愉快だった。転がるのもそのなか。

 朝になれば、あなたの気まぐれなひとこえで、とにかくも隠れ家への移動を了解するかもしれない。一度火になれば、始めた地点を永遠に失う、ように。

 火のなかで、声に似ただけちょうどそこから朝をする。