2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

<403>「景色がひとりで渡る」

整列した沈黙に、何かを感じていられるのであったら、そこは黙って、こちらも渡らなければならない。真面目な顔などというものは生みだすな。ただ、それは歩みに付随して、いかなるメッセージも発さないことに注力する。見分けのつかない、その道に臨む態度…

<402>「ただ」

見ろ、閉じていく。明確に、正確に閉じていく。また、閉じさせないままでいる、その方法も知っている。そして、閉じないのなら、その方が遥かに良いということも。それだけが確認されていれば充分で、その方向だけが見据えられていれば充分で、後は、諦めの…

<401>「触感の変化」

存在の常と、知ってか知らずか、その大きな損傷はやって来て、あるひとりの人間を、得体の知れない強さに変えてしまう。平等に見えることを拒絶して、強さは、いまや景色の全部になろうとしている。 見る者であるという言葉のなさ、当事者であるという全面的…

<400>「年齢が貯まる」

渡すべき人がいるのならともかく、後に残すことになる子供も誰もいないのに、沢山のお金を貯め込んだままで死んでしまう、これは、おかしさの、嘲笑の対象とされたり、批難の対象とされたりもするが、事はそんなに簡単ではない。笑われたり怒られたりすれば…

<399>「死に方、死に際」

悲惨さを誤魔化すことで何事かを成立させようとするのは好ましくないという話に関連してくるのだが、医療、医学といったものの究極の理想は、 「人を、楽な状態へと持っていく」 というところへ置いておいた方がいいと思う。そんなことは当たり前のことじゃ…

<398>「知ったような口」

模倣が、無意識の模倣が、そうして口をついて出る。 「知ったような口を利いてらあ!」 ドワッハッハ! その大きな笑い声たちにびっくりしながら、奇妙に別の空間に落ち込んだような気持ちで、違う、という言葉ひとつを全身の感慨に寄り添わせる。それは、抗…

<397>「満足でも不満足でもない」

満足かどうかと考えれば、もう今の時点で充分に満足だという気がするし、まだまだ足りないのだろうかと考えれば、やはりまだまだ足りないのであって、例えばその足りなさは、仮に私に数百年数千年という年数が与えられたところで、決して満たされない類のも…

<396>「生きて、死ぬこと」

『独りで生きていく可能性の方に賭けろ、全生命を賭けろ、と言われたからそのようにしたら上手く行かなかった。騙された』 と言っている人を見かけると、ああ、可能性に賭けろと言った人たちの真意は、この人には何にも伝わらなかったのだな、と思ってしまう…

<395>「爆発的笑い」

景色が不適当に映ったことなど、かつて一度もなかったが、この有様はどうだ? 私がもう少し気取ったらいいのか? 気取らないことの反応として適当なものがこの、景色らしくもないものなのか? これに、添えるものはあるのか。いやあ、せいぜいが眩しいと言っ…

<394>「距離と幻想」

存在という存在が稀薄な世界で、あまりそちらばかりで遊んでいてはいけないよ、と言う。しかし、現実がまた、私にとって同じぐらいの稀薄さだったら。そことここに、差という程の差を見留められなかったのなら・・・。 先程までの運動は、もう自分のものでは…

<393>「寄贈された部屋」

これが一番本当らしく見えるから、ひとつの嘘として君に寄せよう。ただ、何もない部屋を、想像だけが走るのは、寂しさでなし、喜びでなし。気の遠くなる長さを、一番に、静かに蓄えていた。 君が、何も尋ねないのを知って、景色の前進と、聴衆の仰天には尚更…

<392>「穴にふれる私」

もし、全身が全身、穴だったら・・・。どこかに穴が開いているのではなく、どこかに穴が開けられたのでもなく、これらが全て穴だったらば。私は何も、本当に何も見留めえないだろう。しかし、何も見えないのだ。暗闇、ですらない。視線が、何かに遮られたの…

<391>「出来事と色」

それがある前とあった後では、何もかもが違ってしまっているのだろうという出来事を想起してみる。尤も、それだけのものだから、こちらの意向など一切お構いなし、向こうのタイミングで、好きなときに突然頭の中に訪れてくるのだ、と言った方が正確かもしれ…

<390>「ひらいてはとじる」

ザワザワザワザワ言う声が、生滅を暗示している。いや、それは生滅そのものかもしれないが、プチプチと、盛り上がった、と思えば、次の瞬間には消えている。それは、大胆な拒否であろうか、反発であろうか、ただの快哉であればこそ、ゾワゾワと内側から立ち…

<389>「死ぬもの」

最悪の場合って、死ぬ? そりゃそうだろう。確認は取ったかって、要りませんそんなの。からかって、馬鹿にしてたら不死なのかい? とんでもない! 誰だそんな話。聞いた? 聞いた!? あなたもそうかい。大体が、不死を前提に話が進んで、不安が除かれればあ…

<388>「記憶のこと」

何かを憶えている、というのは微妙な問題だ。適当さと深さとが混在しているので、記憶力が良いか悪いかの基準を定めることが難しい。ごく限定的な条件を定めてしまえば、その条件内での結果はいまいちだが、他の領域においては抜群の記憶力を誇る人などを見…

<387>「語りの賛美者」

君は、ここに立って、数百数十年の重なりを聴いている。 君は、ここに立って、数百数十年の、静かな流れを、集まりを、蓄積を、その胸に納めている。 秘められた、その言葉のために、いちどきに、数百数十年を語り出せ。タイミングなど、問題にするな。私が…

<386>「断片の進路」

どこに戻せばいいのか、いや、何か知らないところへ持ってくるのではなかったのだ、が、状態の変化があまりにも速すぎ動きすぎ、ひとたび巻き込まれれば、なす術もない。何も出来ないところで一応のことは考えた(そこではどうにもならない)。その一応は考…

<385>「歩行の夜の質問」

ひとつの悲鳴? そう、あっちだ! 情けなさが歩みを絡ませ、しかし加速する。全体がこの夜気の涼しさや緊張や快適や、激しい不安らで満たされて、空間と私と目的地と、その距離だけに慎重な祝福が用意される。 どこまでもどこまでも天井の見えない浮遊感の中…

<384>「道にねばりつく」

こうして、表情でいて、出会うとは思っていなかったのだから、もうひとつの目を、向けたのは他でもない、誰でもない。順調な、気分とあなた、睡眠と私。変化が困難を調整し、そんなことは驚きと、浮つきと、現実感のなさとに関係する。 流れを探り出す。探り…

<383>「ある日の波頭」

あいにく、それは雨であり、適当に解かれるまま、背中を駈け、ひとりの暮らしを形作る。愛し、それは港を発する。暗い視線また視線、ピタ、ピタ、ピタ・・・。それは、非常な憎らしさ。何も言わずに絡まった。集めても、集めてもまだ足らない。誰か居たのか…

<382>「スケッチ、僕、ペッティング」

実際の私であって、終わらない、空間の虚しさでもある。ちょくちょく注いで、そうだ、もう少し輪郭をハッキリさせたいと思う、そう、思おう。これは、現実の問題ではない、なら、どうして・・・。がら、がら、がらがらがらがらがらがら。大体の距離を、知ら…

<381>「さあ混ざる」

秩序と無秩序を各々で慰めて、バラバラに慰めていって、後合流させる、そんなことを考えているやもしれないが、それはどうも人工的なことで(当たり前だが)、一度バラしたものの合流後、秩序も無秩序もそこに程よく混ざって存在し・・・というのは、元の自…

<380>「記述と無」

記述行為は無限の優越感を生んでいて、それを防げるか。どこが高等なんだ、人間が?と言うとき、人間の枠から自分だけ外しているのではないか(お前は・・・)。だんだんに無へと向かっていくもの、何かではなくなり、終わりには完全に無になってしまうのが…

<379>「ねだけ」

招き入れ続ける為、卑怯であり得るはずもなかったが、根本以外の回答をひたすらに捨てていった。何かが残ったろうか。妙に緊張していて、そこに不快感は伴っていない。錯覚だろうか。余りがないとなると、自身はいざ知らず、見ている方は間違いなく息の詰ま…

<378>「一点で動いていく」

進めないということで苦しむことはなく、どうあっても進むということに苦しさはある。調子が悪くても大丈夫だし、状況が不利でも、派手に追い込まれていても大丈夫だ。逃げ場がないというのは結局、私がどこまで行っても私であるということで、何ら取り上げ…

<377>「好みの根の深さ」

好みと、好みでないことがある、というのを忘れる訳ではないが、そういうものが入ると理屈が成り立たなくなるので意図的に外しておく。すると、好みか好みでないかというところに行き着いて、というより、そこにしか問題がなくなって、困るというほどでもな…

<376>「握る」

自分から、考えは、想いは、感情は、奪われていなかった。では、決断は・・・? 誰に渡している? また、どうして渡している? 理屈ではどうにでもなることが分かり、どうとでも言えることが分かり、しかし、私にも生理感覚があり、何が何でも決断を他に譲っ…

<375>「どこに置く」

バランスは油断によって崩れるのではなかった。バランスはどうやっても崩れる。それはリズムのようなもので、常に動いているものでありながら、同一であること、堅固であることを求められる理不尽さ、矛盾具合に、バランスを崩すという事象はつきものである…

<374>「静かな嘘になる」

全ての私が嘘であって、どこに行っても嘘にしかならない。どういう訳か、偶然が作用してきて、良い方か悪い方なのかは分からない。言葉を強くしろ、そして態度も強く、それは確かな方策であるとさすがに認めた。ただ、それは嘘であることよりもつらいことだ…