2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

男が、脅えを目に浮かべながら笑っていた。自分が脅えているということをそのまま覆ってしまうように、努めて大きく笑っていた。 男は、嘲りを込めながら笑っていた。私の中の不安を拡大させることを目標とするように、軽蔑を充分に含ませながら笑っていた。…

転校生のA君

「ほら見てこのカード、良いでしょ?」 「わあ・・・良いなあ・・・」 小学校の授業を終えたあと、気づいたときにはA君の家でふたりで遊んでいた。 きっと、連れ去られた訳ではないのだろうから、どちらかが、 「遊ぼう」 と言って誘ったのだろう。だが私の…

実際に会うと、意外に遠い

本を通して、というより文章を通して、作者と私は異常なほどの近さになる。フィクションだろうが、ノンフィクションだろうがそんなことはお構いなく、実際に会ったのではあり得ないほどの距離感がそこには生まれる。例えるなら、私の頭が、作者の腹中にぐい…

「育ててやったのに、感謝してこない」という思考のちぐはぐさ

幾度も書いている方面の話なのだが、今日は、 「育ててやったのに、子どもが感謝してこない」 という論理の、そもそもの破綻についてひとつ。 子どもは、出生に際し、生まれることを望むあるいは望まないという類の意思表示が出来ない。また、出生先を選ぶこ…

不安の起こるところ

根拠のない不安感、何もかもが閉じていくような苦しさは、大体が胸のやや上部辺りから、首の辺りにかけての領域で発生している。 頭は、後々それに気づけるというだけで、どうも頭の中で不安が発生している訳ではなさそうだ。じゃあ何故頭に不安が渦巻くかと…

モテる姿勢そのもの

昨日の文章を書きながら気づいたのだが、 「支持してくれて良いですよ」 という姿勢それ自体が、そのままモテる姿勢でもあるのではないだろうか。 つまり、 「目立った活動≒好かれる条件」 など無いままで支持されることを不信がらないという態度が、支持す…

表に出ていないと応援しづらい

目立つ場所で脚光を浴びている人に対して、 「チヤホヤされて良い気になりやがって」 とやっかみを言う人がいたり、反対に、脚光を浴びている人自身が、 「今、大きく取り上げられているからチヤホヤしているだけでしょ」 と卑屈なことを言っていたりする。…

初めて出会ったものとの結びつき

好きな歌手でも作家でも何でも良いのだが、好きになっているからには、過去に必ずその人との出会いというものがあったはずだ(勿論実際に会うということではない)。初めてその人の歌に触れた、その人の書いているものに触れた、という瞬間が必ずあるからこ…

余裕の遊び

遊びについて度々の記述を重ねてきたが、私が、 「遊び」 と言うときに思い描いているのは、 「かけっこやかくれんぼ」 といった具体的な遊び方ではなく、 「余裕やゆとり」 の方であるということは、もう説明するまでもないことであろうか。 ただ、だからと…

寒いんだか眠いんだか

気温が下がって身体も冷える。身体が冷えるから眠くなる、といった具合で、気づいたらのべつ寝ているようなことになっている今日この頃だ。 大体が、眠いのは本当だとして、睡眠が足りてないから寝ているのか、はたまたそうでないのかはまるで分からない。た…

そんな階級があったのか・・・

(カーストって言ったら、バラモンとかクシャトリヤじゃないのか・・・) 一見平等に思えるところでも、実は身分制のような階級があったりするという話を聞いて、驚くまでには至らなかったが、 「ほう・・・」 という程度の感想と疑問とは持った。 よく使わ…

情けなさを失う

他罰的機能は、存在するかのような顔をしているだけだと昨日書いたが、それでも一応法律や権力は、一種の暴力としての力があって、それを怖れる私はいる訳だ。 しかし、その機能の仮面を剥ぎ取って無力化してしまう、怖れを知らないように見える人たちがいる…

自罰しかない

「こんな時間に映画を観ていて良いのだろうか・・・?」 平日の昼間、雪が降ったこともあり、普段より一層少なくなっているであろう客足の中、座席に着いた私はぼんやりとそんなことを考えていた。 厳密に言えば、朝のバイトを終えた後ではあった訳だが、自…

そうか、口だったか

以前、『目の周辺にいくらか力を入れていないと・・・』というものを書いて、その中で、目が死んでいることに対する苦労みたいなものを披露したのだが、顔の構造上、目を生き生きとさせるためには、わざわざぐいと目の周辺に力を入れなくても、口角を上げれ…

目で択ぶ

以前、『目で決まる』の中で、相性の良さは目を見れば分かってしまうというようなことを書いたが、これを私自身、今度は女性を見るときに、多少歪んだ形で使用しているのではないかということに気がついてしまった。 わざわざ今更ここで告白して見せるまでも…

本当は出来ることを馬鹿にされると・・・

本当は得意なんだと気づいているけれども、今までは特に身を入れてやってみる気になっていなかったものは、ひとたび他人に嘲笑されると、今までの無関心が嘘だったかのように一気に火がついて、見返してやるつもりで深く没入して行くようなことになっていた…

最良の暇潰し

何かしら、長時間待たなければならないとき(例えば移動中など)の暇つぶしとして最良なものは数独で間違いない。 本もかなり良い。が、本は、 「それにしても、まあまあ待つなあ・・・」 という思いが頭をよぎる余地がまだある。対して数独は、ぐっと集中し…

別に、しなくて良いのかもなあ・・・

相手の思っていることを直接体感することは出来ない。 「きっと、そういうふうに思っているのだろうなあ・・・」 ということを、相手の表情や言葉から推し量ることが出来るだけだ。と、どこかで書いた。 日々の暮らしを営んでいると、このことで答えの出ない…

そうそう、そうこなくっちゃ!

化粧品など、美容に関する会社の代表で、 「もうおばあさんと呼んでも良いほどなのに、やけに不自然に光り輝いている」 人を見ると、何だか嬉しくなってしまう。そうそう、そうこなくっちゃと。 あの、何とも言えない胡散臭さがたまらない。何かの作品かと勘…

憶えすぎる

「2日前の夕食を思い出せるようにしましょう」 脳トレか何かの類で言われていたことではなかったか。なるほど2日前の夕食は、と急に訊かれると、なかなかに思い出せないものだ。 ただ、思い出せるよう常から意識しておくと、2日前の夕食を思い出すことぐ…

元々物欲が・・・

「ヤダ! 買ってくれないとヤダヤダ! ぶわぁ~ん!」 微笑ましいとは思いながら、あまりにも甲高いその泣き声に、やむなく苦笑してしまう。母親は、構わずグイグイとその子を引っ張っていった。 その光景を見て、 「あらら、残念だったねえ・・・」 とは思…

目で決まる

大体、皆同じような経験を持っていると思うが、ごく親しい関係にある友人などは、余計な時間の蓄積など経ずとも、一瞬で急接近出来、後から思い返したとき、はてどのタイミングでどのように仲良くなっていったのか、全く思い出せないなどということが往々に…

やってダメか、良いかのどちらかだけ

ある分野に対する、批評という仕事を否定するわけではない。むしろ、批評に拠ってその分野が生きてくるということもあるのだから、素晴らしい仕事なんだというように思っているぐらいだ。 ただ、内臓感覚的に言って、私は、好きな分野に対して批評という立場…

老いていくことと、鍛えること

昨日、ヨガの話を書いた序に。まだ、老いることを考慮に入れて日々を送っていかなければならない、というような切実さに悩まされるほどの年齢ではないが、運良く生き延びれば、必ず私にも老いの問題が迫ってくることは確かだ。 今は何の気なしに軽く身体を鍛…

食って寝ろ

「やっぱり本を読まないとダメだよねえ・・・」 私が、本を好きでよく読んでいるということを知っているからか、こんな質問を投げかけられることがある。 「う~ん、どうなのかねえ・・・」 と、そのときは曖昧に返すが、本当は、 「これこれをやっていなき…

黙り過ぎ・・・か?

種々諸々のことを気にする割に、人が集まる場面に遭遇したとき、延々と黙っていることは案外平気だったりするところがある。この部分であまりにも鈍感なため、誰も話し始めない気まずさに、あまり気づけていないだけなのかもしれないが、ともかく、そういっ…

身体の遊戯性

母親の後ろをひょこひょこついて歩いていた子どもが、ふっと立ち止まり、身体を右向け右して、そこにそびえ立つ大きなビルに向かって両の手を突き上げ、 「ワーッ!」 と叫んだ。 「何やってんの、早く行くよ」 戯れを咎め、母親はその子の手をひき、そそく…

反発しているうちの考えというのは

違う意見を押しつけられたとき、それに強く反発して自己主張をする。このとき、なんだか自身の考えを積極的に打ち出せているように感じて、ある種の満足、昂揚を覚えることが出来る。 しかし実際、反発しているうちの考えというのはまだまだ自身の中で不安定…

意識から外すには、あまりにも身に付き過ぎていて・・・

母語としての日本語は脇に置いておいて、感覚という母語の母語を浮き上がらせるため、全く馴染みのない言語を操る人たちの映像を延々と見てみる、という遊びをしてみたのだが、これが赤ん坊の頃に抱いた感覚だろうか。話す人々の表情、音の高低などを頼りに…

説明が追ってくる

以前、『過程のひとつだとして見直してみれば、そんなに文句を言う必要もないのでは』というものを書いたが、どうも私自身、なんとなくここのところ腐らなくなってきていて、横たわる感情が、心なしか温かなようになってきている。 ここで、説明が追ってくる…