2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧
同じ部屋に、自分を含めた数人が集まり、待機している。別に、仲の良い友達同士という間柄ではない。こういうとき、話しているのと、全く話さないのと、どちらが気詰まりなのかが人によって異なると困ってしまう。 私はこういうとき、ポワーッと呆けているの…
卑下したくなる気持ちも分かる、と言いたいところだが、正確に言えば、分かったと言った方が良いだろう。というのも、自分を高尚だと妄想したり、卑下して自分を安心させたりといった形で心のバランスを取るのが邪魔くさくなった、つまりはそんなことをする…
良いことなのか悪いことなのか、そんなことは知らないが、未来の自分というものを上手くイメージ出来た試しがない。それは、絶望しているからというのでもなく、希望を持っていないからというのでもない。ただ単に描けないのだ。 「小学生の頃に思い描いてい…
知識の蓄積や何かでもそうなのだと以前にどこかで書いたが(参照『全く何も分からなくなる』)、小さいころから今の今までずっと、自分の人生、自分のやっていることだけが嘘っぱちで、周りがやっていることはひとつ残らず自然で、本当だというように感じて…
好調だ。実に好調だ。その調子もそのうち鳴りを潜めることを知ってはいながら。目の前に座る、ひとりは恥ずかしそうに笑い、もうひとりはニヤニヤと笑っている。この後、ニヤニヤ笑っている方が、ちょっと外すねとか何とか言いつつ、もう戻ってこないことを…
せっかく混乱しているのだから、混乱ついでに、全く分からないものに対して向かい合おう。私は、数学がまるで分からない。いや、それ以前に、算数を分かっているのかどうかさえ怪しい。一応、中学や高校でも数学は習うには習ったが、私はただ、試験前になん…
筋トレをしても、ジョギングに向かっても、歩くのが好きでスタスタ歩いていたとしても、憂鬱なものは憂鬱だ。それが完全に克服されることはない。憂鬱なまま、体力だけが徒についていく。 元気のない私が、元気いっぱいに動きまわる子どもたちを、淡々と走っ…
混乱している。どう混乱しているかの説明が付けられないということは、本当に混乱しているのだろう。何も見失ってはいないのだけれど、何かを見失ったような感覚がある。 生活には、一応の規則がある、リズムがある。とりあえずのところに置いてある目標みた…
やっていたものを一旦押っ放り出して、水分でも摂りながらどこかに腰を落ち着ける。それが休憩だと言われちゃあ、少しばかり物足りない。その上で、ひとりでいられることが重要だ。それは休憩じゃないとまでは言わないが、皆でガヤガヤと同じ席に着くのは、…
手が大きい。やたらに大きい。いや、実際、私の手は小さい。手のひらを合わせて比べっこをしたら、同じ世代の、手の小さな女性とほぼ変わらないというぐらいには小さい。つまり正確に言えば、この頃何故だか知らないが、自分の手を大きく感じてしまっている…
機能、合理を突き詰めると、最終的には皆、同じ表情になっていく。どこに行っても同じ風景、同じ空気、同じ顔の人々。いきなりポンっと異国に連れ去られようが、次はどこの角を曲がればいいかが分かる世界。 それがグロテスクであるということは、多分誰にも…
以前、人間関係の問題は全て距離感の失敗なのだろう、ということを書いたが、都会は、それの最たるものだ。あんな狭さにあれだけの人が集まっていれば、そりゃ随所で問題(という幻)が湧き起こるに決まっている。どんなに温厚な人でも、あの中に放り込まれ…
ある人の、若かりし頃の日記と、ある人の、若かりし頃の映像が重なる。その重なりがもたらす風景は、非常に整然としている。パチ、パチ、パチと、決まるべきところできちんと決まっている。分かりやすい、気持ちいい。しかし、どうだろう。何となく固い、硬…
何の根拠もないのだが、自分も含め、若い人間の顔を見ると、 「嘘の顔」 あるいは、 「偽物の顔」 だなと思ってしまうところがある。それに比べて老人の顔は、肌のハリ、ツヤがなくなって、皺こそ圧倒的に増えているかも分からないが、それでも、 「本当の顔…
いかにも世間の人、社会と一体になって動いている見本のような人と思っていたのが、外に出ないで家にばかりいるとロクなことは考えないのだと言い出した。なるほど興味を持った。こういう人でも、ロクでもないことを考える瞬間があるのか。一体、どんなこと…
大人って何だろう。 「大人とは」 の後に、ありとあらゆる言葉が並び得ること、ときにはその言葉たちが矛盾をはらむことから見て、大人というものを定義する明確な条件は無く、その存在自体が曖昧なものなのだと思えてくる。 私が、人のことを大人だと感じる…
重い。気持ちがどんよりと重い。まるで何もしたくない。習慣だけをただ、沈んだ眼をして淡々とこなしているという状況だ。習慣は怪物であると先人が言ったのは本当で、これだけは何か、私の意思とかそういったものをもうとっくに越えて、勝手にお構いなしに…
めんどくさい。どうしてあっちこっちに顔を突っ込んであることないこと言って、下衆な話で盛り上がって、 「まあ、根拠はないんだけどね」 とゲラゲラ笑って、そのくせ他人からどう見られているかに一喜一憂して、卑屈な目でこちらを見つめて、甘ったるい声…
近頃あんまり歌わなくなった気がする。と言っても、毎日何かしら、口ずさんではいるのだが。力を入れて思い切り歌うということが極端に少なくなった。 まあ、一生懸命に歌うだけが全てじゃないからそれでも良いのだが、何となく寂しい気はする。本意気で歌う…
ともすれば、何の興をもそそらないほどに整っていたあの人は、自身の美貌を快く迎え入れていた。己の力に拠らないところのものに、少しも後ろめたさを感じていなかった。 あの人には、自身の美貌によって、人を試すようなところがあった。 「一体全体生涯の…
主に外で使っている言葉だ。大体これらで回している。自分でもよく分かるし、これを見た人も分かるし、私と直接言葉を交わしている人たちもちゃんと気づいているだろうが、普段、まるで何も考えていないのがあまりにも明らかだ。 まったく、困ってしまう。何…
健康面での不安を煽る広告に、憤りこそ感じないものの(年齢のせいか、まだそういう類のものに騙されて何かを買ったということがないから)、激しい違和感を覚えるのは、どの広告も等しく、 「まるで、死を無いものかのように」 扱っているからだ。 「このま…
火葬されると、遺体は空中にふわりと浮き上がる、という話を思い出し、じゃあ、今あの人もちょうど、まるですっくと立ち上がったかのように宙へ浮き上がっているところだろうか、と考えた。燃え盛る火の中、閉じられた瞳が、やさしく微笑むようにこちらを見…
調子が悪いときならいざ知らず、身体の調子が良いときは、まるで臓物の重さというものを感じない。何だか自分が、空っぽの容器として存在しているのではないかと錯覚するほどだ。 以前、『浅い部分で受け容れないところから』というものを書いたが、肉体感覚…
歩を進めていると、俄かに前方の景色が華やぎ出した。駅がもう近いのだろう。高架線を支えるように、歓楽街から一区画だけ切り取って持ってきたような雑居ビルが整列している。 その切り貼りが、一帯を脅かしもせず、空っぽにもしてしまわず、見事な興奮を辺…
本とは何の関係も無い話だが、分からないこと序に。今はもう言われなくなったが、幼い頃よく、何かにつけて、 「偉いね」 と言われていたことを思い出した。しかし、褒められていると分かるから嬉しかったものの、一体全体何が偉いのかが分からなかった。 そ…
本を読むという行為は能動的かも分からないけれど、その内部では、著者が一方的に語り、私はそれに耳を傾け続けているのだから、本に触れるのはひどく受動的だとも言える。 それで、何故この受動的な体験に心を惹かれ続けているのかを考えると、それは私が、…
過去、時間もあったし、やろうと思えばやれたけれども、わざわざそれをやってみはしなかったことは皆、後悔の種となりうる。 そして、もう先がいくらも無いという歳になると、それらの種は、甘美な思いを味わうためだけにことごとく育てられ、花を咲かせられ…
かわいい、かわいいと言われ続けているあの子が気に入らない、態度が癪に障るのだと、君は言うのだね。しかしだね、かわいいと言われ続けている人たちは、ああいう態度のところへ、実は押し込まれているのだよ。 褒め言葉であるからして、良いことばかりだと…
暗闇の中に、ぼうっと唇が浮かんでいる。こんな暗さで、唇だけがハッキリと姿を現しているのはおかしい。しかし、それは鮮やかに輝くというのでもなく、鈍く光っている。 見ているうち、これは立って眺めている景色なのか、それとも寝そべって眺めている景色…