2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

<1157>「溶けている」

次々に溶けていくのです。 歩行の男も、 鐘も、 感じ方も、、 どろどろになっていくのです。 あの羽根の夢も、 香る匂いも、 静かな翻りも、 ただ勘違いの幻であるやもしれません。 そこへ口をただ寄せて、文字もなく、伝達もなく、ゆるい響きをもたらすひと…

<1156>「駆く、駆く」

けぶっていて、前がよく見えない。 穴か 穴か、穴なのか。 車輪の回転、息、身体が重い。 ひそかに繰り返しのなかに入(い)る。 誰だ、誰だ、誰だ、 この道はどこへ響く。 昨日まで何の音もなく静かに沈んでいたところ。 珠を次から次へ送る。触る。 速い。…

<1155>「六月の青い老人」

ひとーー。ひとーー。 騒がしい。 蒸れる。蒸れる。 六月の青い雨、 蒸れる。 かく さなぎの中へ、 かく さなぎの中へ廻り、 蒸れる。 ひとーー。 長蛇の列。 青い青い列の中の瞳。 青い青い老人。 かぐわしくなったろう、身体。 わたしを結んでおくれ。 長…

<1154>「見立てとアクロバティック」

まあとりあえず話してみてください。 そうですか。ええと、、何故論理だけでは間違うのか、ということを論じていくというのは野暮天中の野暮天ですが、まあなんとかやってみましょう。 何もない状態が、まず自然な状態がありますね? そこに言葉を付していく…

<1153>「緑色の男」

緑色で、嘘の季節だ。 緑色で、濃く、むせる、嘘の季節を好いている。 男の服も、交わりも、姿勢も、全てが緑色で、途方に暮れていて、繰り返して、テクノが好きで、静かだ。 人口の川が流れる先に、家があって、 緑色の自転車に乗り、 日々を全て身体に付け…

<1152>「路地に重なる」

良し。 あれよ、あれよというマに、 揺れ連れられてきた。 歩道にけつまずく。 ひとつの風景に帰した。 徐々に、徐々に、揺れはひろがり、 わたしはまた歩きやすくなる。 さんざばら話していた言葉の中を。 ひとつの割れを、 割れを眺め、静かに持ち上げてゆ…

<1151>「雨の子どもの家」

路地。 くもる。 慌てて音を出す。 突然雨の意識を持つ子ども。 二人には匂いがする。 眼鏡の隅に小さく映る。 駆け出していく。 明かり、明かり。 呆然とただ陽のなかに入(い)る。 香り、香り、分からない。 傘を振るった。 人、人、地下通路、雨。 微細…

<1150>「て、読んでいる」

日の白い紙を読んでいる。 読んでいる、読んでいる。 水と、流れると、傾き、読んでいる。 あなたが 日毎 読んでいる。 読んでいる、読んでいる、読んでいる、読んでいる。 一杯に詰めた籠、隙間、漏るもの、あわい、日陰にしては日陰、、で読んでいる読んで…

<1149>「ひとすじの風の中を」

陽を触れる。 鋭敏で、鋭敏で。 丸みを帯びて、陽光で、二人で、意識で、晴れで 気まぐれが後の世へひとつ、ひとつと歩を掛ける。 そこに花が咲いている。 ありふれた日の中に過去からずっと伸びている。 ひらく。 歩幅と、湿り、軽やかさ、 後はただの香り …

<1148>「わたしの死を知らない人」

無音の青年が私を覗き込んでいる。 無音としか呼べない姿勢で、 肌を、目を、あるいは振舞いを覗き込んでいて、 また交わす。また混じる。 ひとが出る、退く。 (あるとき僕は葉子になった。しかし生活の全てではなく) 見留めた。根も、姿も忘れ、また見留…

<1147>「七十五の新しい人」

なんなむならむ、な、 なそ、、 むにゃらなむななむ、 な、 (七十五の眠り) (七十五の夜) おどろけおどろけ、 ひとつの脳と、 ひとつのお祭り、 麻痺、ふいに目に入る信号と、 当たり前の小枝、過ごしてきた色、 はばかり、隠れ、、 あと一息出だす。 滲…

<1146>「なんなむ、炎舞」

そっぽうへ、 爽やかな背を向け、 からむ、ころむ、よろろぐ、 まず羽根へ よろめきへ 歌へ、 洋々 ひろびろ、 風は名前を過ぐ。 ひとりで立っている。 あるいはわたしの後ろへも。 あらわれあらわれ 眺めやり、 やすらか うたんしょ 遠々 かすみ、 やわらか…

<1145>「道をもらう」

見事にもらってしまう。 軽やかにまた道をもらい、 好きに浮かぶ。 かつての名を通り、ひろやか。 もののそばで、影のそばで、、 中心もなくぼんやりとして。 飽くまで全てを昨日にとっておき、、 当たり前に眺む。 明らかでない道も、 昨日から知っているこ…

<1144>「関係を限定する」

ひとりの人とひとりの人として、なんとか、あいだに約束事を挟まぬままに付き合いを続けられないものだろうか。 社会的な約束事は抜きにして。 ある程度以上親密になれば、社会的約束事を挟むようにそれとなく唆され、受け容れれば結果としてそのなかに閉じ…

<1143>「日の外から来る朝」

川は続き、平穏を取り戻した朝へ。 待ち、待ち、暮らしている朝へ。 あたらしくかぼそく道の、ふたりで映る姿。 手招き、平穏に暮れる朝へ。 ふとその流れの一端を、もの珍しく含むとき。 葉の香りが隙間に揺れるとき。 わたしはより一層の遠くを想おう。 あ…

<1142>「太陽(同時代人の)は長い」

この装いの もひとつ軽く、、 彼方から流れてくる匂いの、 もひとつ軽く、、 空気に進んで、 人を見て、夢を見て、、 時折現実が嘘の装いをしても、 軽々と歓喜の底へ舞い戻るように。 気温は長く、感想は短い。 明らかな根と声で、 明らかな振舞いと目で、…

<1141>「小麦色の夢」

この小麦色にきらめく時間、、 この小麦色にきらめく時間が、長い長い夢となりますように、 長い長い、静かな笑みとなりますよう、、 あたしはあたらしい陽をここに照らしてもらいました。 数限りのない流れのなかでささやいて、 ひとりで見て、 歓喜の底に…

<1140>「転ぶ朝」

追うだけの朝ではなく。 ためらいだけがまた朝なのでもなく。 数限りのない仕草の上へ、ひとり寝そべる。 まだらになっているままで小さな記憶のそばへ浮かび、 どこを向けたらよいかも分からない。 ふたひ。 転んでいる朝。 目が覚めてはそこここに淀み。 …

<1139>「緑の列車」

かく回転する。 かくまた回転することのなかに。 おそれ、いっときの考え。 まだ言葉もアけていないそばから。 道端に静かに倒れてゆくさま。 その名残りでそこへ出来ているさま。 数々関係のあるもの、丁寧に膨れ、 いっときの色はない、影もない。 モノト…

<1138>「わたしらから」

あれしら、 ものすごいはやさでたわんでゆくだろう。 よ、長き日。 ひとつの不始末を混乱とともに見つめる日。 あるかなきかしら。 わざと。 もう呼吸を思い出だせないほどに前。 逆さに文字を読んでいる人々。 二度とない言葉伝い、 激しい道。ただひたすら…

<1137>「一度の草、一度の宇宙」

彼ら、彼らには窓辺。 不慣れ、あくまでも。 その不慣れな窓に尋常様にもたれかけ、 吹きぬ 吹きぬ 眺めやる。 すると、たった一度の宇宙 たった一度の宇宙に草がひとりで凪いでいて 無限回の夕映えにあこがれを等しく映している。 このまま実にすみやかに、…

<1136>「声の薄明かり」

第一声は過ぐ。 かわるがわるにじむ。 いじらしく傾いて、 ぼんやりとネになる 横になる。 第一声は過ぐ。 ひとり 新しい。 昔の姿形。 ただ空きマにたたずみ、 ひとつ、ひとつ、ひきずる。 眩しさは変な感じがする。 誰も眩しさに目を留めていないようでも…

<1135>「第三時の人、窓」

声のと、のと、声らしい 腹なかのニ、三本線 たんに勢い、転がる。 転げり出でてまた のとニ、三、ニ、三本線 ようなら はっと転がり出でて、 はっと転がり出でてなにやん、 第三時 ただのまっさらな第三時にわたしは、普通の人になりたい。 包み、ひらく。 …

<1134>「明るい拒否」

同じ日々のイメージ 同じ日々の企み ここがここえゆくまわること 同じ日々のイメージ。 あなたのあの明るさは拒絶なのかしら。 素直に前を見つむ、あまりに素直に前を見つめすぎた人。 語り、語り、語るに、イメージ。 よろけて 暗い、暗い。 周辺は明るい。…

<1133>「他人と乾く朝」

姿態と姿態 おそらくはくわえ、なまめしやか。 あでやか で あでやか。 膨らみ、協和、歓声、ボウル、液 とびきり とびきりと とびきり あの赤い匂い。 モード、出鱈目、遮る、昼日中、まくら じれている じれている と じれている 扉、汗、二日前のコンサー…

<1132>「その隙間を出る膨らみ」

すみやかに変わる。 姿が。 時期、人が。 その翳りが。 目線が、途切れ、中央を過ぐ、整然と、綺麗。 色が。 たった一度の言葉が。 モニュメントのマを涼しく通ってくれる人、人に次ぐ人が。 喜び。 昨日あくまでぴったりしていたもの。 過去が靴の形をした…

<1131>「あなたね」

あなた、知らないの、不幸ね。 あなた、知ってるの、幸福ね。 あら あら あなた、知らないの、幸福ね。 あなた、知ってるの、不幸ね。 どっちも、どっち、あなた、話してよ。 そこはかとなく、揺れ そこはかとなく、触れ あなたは拘束の目をしている。 権利…

<1130>「湯気のなかの日」

着く、着く、着く。 まぎわにそ、と離し、着く。 目、公園を大胆に横切る、日。 細い、細い、白い雨。 あずまや あずまや、あずまや。 知り、頭のなかだけでぼうとする、知り。 やき、歩行、嘘と、軽やか、一切。 探る人、探る人、あくまでも探る人。 その夜…

<1129>「涼しい都市を見る」

すはやさでゆく。 何故か、すはしこく、すすしい都市へ。 すはやさで。 われながら濃く、時折は踊り。 すはやさの都市。 まだらけ 緑 常温 たどたどしい。 全生物の目をして。 目を演じて。 よそゆき、逆行と、静かな日の一歩、 いっしょくたになる。 あまり…

<1128>「火の中の新しい老婆」

老婆 火 わたしである わたしの前に火、うつむいた老婆、 老婆、老婆、眠る、 火の照り、さなかに溶ける。 わたし わたし 火 老婆 うつり うつり うつらと うつらと 光り 照る 照る 老婆 うつり わたしにもそんなことがあったよ・・・ とける とける わたし…