断片

<2673>「友情的に存在するということ~過去と治療8(終)」

家族というものは、私にとって、 「私は存在しない」 と思い込まないことには通過出来ない場所でした。 同時に、私はその妄想を、自己の足場として内化し、強化しました。 生来の気味悪がりから来る、応えなさを、逆に自己の特色として育てました。 心苦しい…

<2668>「存在する父、存在しない父~過去と治療7」

父は、家庭だけでなく、ちょうど私が中学生ぐらいのタイミングで、会社でも何かが上手く行かなくなっていたのかもしれません。 帰ってきては酒を飲み、家族に嫌なことを言い、そのことで家族が嫌な顔をすると、それをきっかけとして掴まえて、キレて当たり散…

<2659>「私は存在しない~過去と治療6」

今生きている現実と、子宮内で体験した現実とに大きな開きがあり、いつもおびえて、応えず、気味の悪さを抱えているひとりの人間。 その人間は、家の近くにある川沿いをひとりで歩く時間に、妙な安らぎを見出すようになります。 ここには誰もいない。 ここに…

<2653>「心情的に裏切る、呑み込まれる~過去と治療5」

私は、野球をしてみたいなどと、自分で思ったことはありませんでしたが、嫌だというほどのことでもなかったので、見学に行ってみることにしました。 実際に練習を見ていても、特に何も感じませんでしたが、帰り際、父や、コーチをしている周りの大人たちに、…

<2647>「愛していないし、応えない~過去と治療4」

事件の映像を見終わると、父は、私に向かい、 「お前も将来こういう犯罪者になりそうだな」 と言いました。 周りの家族や親戚は笑っていました。 私は、何がおかしいのかが分からなかったので、笑いませんでした。 しかし、今になって思うのは、そんなことを…

<2635>「泣かないし諦めている〜過去と治療3」

私が物心が着いた頃にはもう、父のそういう姿というのを見ることはありませんでした。なんとか立ち直っていたのでしょう。 両親からすれば、ここから一生懸命やれば、子育ても大丈夫なはずだ、と思ったはずです。 二人の状況や張り切りを想像すると、やや切…

<2630>「お腹のなかにいた頃の話~過去と治療2」

私は、吉本隆明さんのことが好きで、よく読んでいます。 吉本さんは、おそらくご自身のテーマのひとつであるのだと思いますが、胎児や赤ん坊の話をよくしています。 そこで、私が面白いなと思って読むのは、お腹のなかにいるときに経験すること、生まれてか…

<2624>「気持ちの悪い日曜日~過去と治療1」

今はもうそんなに若くもないので、それぞれの人生の物語や環境が違うことがよく分かっています。なので、一般的には、人間は、家族というものを形成していった方が良いのだと、今は考えています。 しかし、個人的な話をすれば、私は、家族という在り方を、全…

<2542>「即興で編集してペラペラと喋ること」

『心はこうして創られる』 何回も言及してしまうが、いやあ面白い。 今度はまたこの本を読んで違うことを考えている。というか思い出している。 本の中で、人間は記憶の蓄積を使って即興的に言説をその場その場で作り出しているという話が出てくる。 それで…

<2537>「人が見ているところ、見ていないところ」

人が見ていないところで頑張っている、と聞くと、あなたはどう思うだろうか。 人が見ているところで頑張るのは当たり前だけど、人が見ていないところで頑張っているのはすごい、と思うだろうか。 こんなことを書き始めたのも、もし上記の感想が広く一般に共…

<2496>「山手線の興奮」

初対面のインパクトが大きかったので、山手線に乗る機会があると未だにちょっと興奮してしまう。 中学校の部活で、他校への遠征があり、電車に乗った。 京王線からJRへ乗り換え、都心へ向かい、それからまた乗り換えをして、が初めての山手線との出会いだっ…

<2474>「しつこさという毒を」

小学生くらいの頃だっただろうか。 家族で田舎に帰省して、祖父母の家で、妹と一緒に遊んでいたときだったと思う。 遊びの最中、何が気に食わなかったのか、そもそも何か気に食わぬことがあったかも今は定かではないのだが、妹に対して、 「それはどうしてな…

<2470>「自分の欲望を上手く捉えることは」

私は、話したいと思っていたのだろうか。話したくないと思っていたのだろうか。 自分の欲望を正確に掴まえることは難しい。 中学生くらいのとき、 「私はもっと話したいのに、私と話していると、クラスメイトが途中で遠慮するように話すのをやめてしまうのが…

<2437>「内には立ち入らせないという、その始まりの日」

社会科見学の一環のようなものだったのか、 小学生のとき、地元のスーパーやお寺や、その他なにやかやを班ごとに分かれて巡るような活動があった。 と言っても、ひとつの班は大体1か所か2か所くらいを巡るだけで、あらかじめ決められたスポット全てに行ける…

<2362>「大倉集古館に行って来ました」

www.shukokan.org 普賢菩薩騎象像が見たかったものですからね。 実物はすごく清潔感のある、というか、すっきりと丁寧に作られているものだなあと感じました。コクホー。 目を閉じているようで、うっすらと開いているんですよね。表情はなんというか、集中し…

<2253>「不思議な問い」

yutaro-sata.com yutaro-sata.com 自分のことはよく分からない。だから人から、 「あなたって、こういう人だよね」 「こういうところがあるよね」 というのをぽおん、と放られると、とても勉強になることがある。 自分自身を探る手掛かりをもらった、という…

<2020>「川のそばをひとりで通る」

あなたは線なのか、 あなたは振動線なのか、、 どこから見たら、この、光景は、、 あのひとつの、印になる、、 私の肌は束だ、 いくつも風の、残りが溜まる、 そういう場所だ、 視線が、何か、 はっきりとした意味を持ちすぎてしまい、、 私は戸惑う、 私は…

<1960>「仮の場所」

僕とあなたは暗所に居ました、、 このなかで、 なにやらカードだか、おもちゃだかを見ていて、 ここが暗所なことを、 気にも留めませんでしたね、 あなたのお母さんが、 静かに台所で何かをしている、、 僕はその背中を、 遊びの熱からそっと逸れるたびに見…

<1959>「声と左手」

次から次へと鳴り、、 今はどこなの? と、静かに言う姿、、 私はどこか遠くから、 ひとつのしるしを見て、 ふらふらとここへ出てきた、、 どこかから漏れてきて、 私はいた、 私は身体を持っていた、 潜行的になったのはいつからだろうか、、 複数の声が当…

<1825>「無声(2)」

とても巨大なものに常に対していたと感じるのは、私が大人の腰の高さぐらいしかない子どもだったからというわけで、、 そうすると、私のなかの点の記憶も、 実地を辿れば巨大ではないのかもしれない、 ということに、気づくのは嫌ですね、、 嫌だけれど私は…

<1824>「無声」

まだ幾月も経っていないのですか、そうですか、 私はとっくにその時間のなかに紛れて、、 もう劫を経たのだとばかり思っていましたが、そうですか、、 まだこの月日のうちですか・・・ 私はこんな話からものをひらくのをなんといたしましょう、 これは親しい…

<1724>「あたしはただ遊んでいるだけだ」

あたしはただ遊んでいるだけだ、 というと、だいぶてらいがはいるというか、 かっこつけになってしまうので、ちょっと出ないように警戒しているが、 あたしはただ遊んでいるだけだ、 ってやはり口から出るとちょっと爽快なもんだから、言いたくなったりして…

<1723>「暗い日に」

全く軽い手足で持って、 ここへ、一日のありえた形へ、 戻り、、 あ、今はその行先ではないのだな、という、 感覚、しかし、ちょうどこのような曇天で、 皆でバスに乗り、 野球をしに、どこぞの中学校だかなにだかに行かなければならなかった時間を思い出す…

<1110>「ジェットコースターと本と」

午後になる。お酒を買いに行った。 何故お酒を買いに行かなければならないのか、それは分からないのだが、ともかく行った。 ジェットコースターの話を思い出している。強度に関係することだったろうか。 ジェットコースターの上から 男が叫ぶ。 「ベンチに座…

<1091>「ある暑い日に」

大きな風車が浮かぶ、、 野球帽の下に小さく収まっている、 のどがかわく 涼しい、 全然見たこともなかった人たちが今日も生きている、 記憶の蓄積から、机から遠くに来てしまった、 駅はどこだろう、 何を食べている? それにしても何故ここまで晴れている…

<1073>「完璧な一日」

完璧な演技で全てをすっかり騙してしまって、 さて部屋に戻り(お湯を沸かして、コーヒーを飲みながら)、 テレビをつけ、野球を見、 イニング間の弛緩期に、 ゆっくりとほくそ笑むのだろうか、、 (一点取られた) いいや、ひどくどんよりとするだろうと思…

<978>「一枚の絵を運ぶ人」

壁に一枚の絵がかかっている。もう何年そこにかかっているのだろうかそれはわからない。 ひとりの男が絵に手をかけ、そのまま持ち上げると、すみやかに去ってしまった。 たれもがああと小さな声をあげた。 「持っていかないでくれ」 なのか、 「ああ、持って…

<960>「遺骨の夢」

お葬式の在る風景を おひーさんがいつもより緩やかにゆく きゃらあ きゃらあ ぼだい ぼうだい ぼだいおん おんおん ま、さらさら あたしは遺骨 ただの温度と隣り合い転がるのを眺めていた、 煙とともに過ぐ、、 うたぼだい はだしの車、 窓の隅にひととき華…

<856>「Y市と一杯のコーヒー」

Y市は私のなかで、いつまで経っても延々と図像を結ばない町である。 ついに結ぼうとして、徒(いたずら)にY市から遠のき、再び訪れる頃には、香り的な記憶及び断片のイメージしか残ってはいない。 見覚えのあるバスに、訳も分からないまま揺られてゆくと、…

<848>「靴磨き」

靴磨き:靴を磨きましょう。 旦那:何で? 靴磨き:どうということもありませんが。 旦那:あそう。いくら? 靴磨き:へへ。 旦那:へへじゃないんだよ。いくらなの? 靴磨き:いくらでも、まァ、どうぞ。 旦那:何だそりゃ。まァいいや。 靴磨き:靴を買う…