断片

<2020>「川のそばをひとりで通る」

あなたは線なのか、 あなたは振動線なのか、、 どこから見たら、この、光景は、、 あのひとつの、印になる、、 私の肌は束だ、 いくつも風の、残りが溜まる、 そういう場所だ、 視線が、何か、 はっきりとした意味を持ちすぎてしまい、、 私は戸惑う、 私は…

<1960>「仮の場所」

僕とあなたは暗所に居ました、、 このなかで、 なにやらカードだか、おもちゃだかを見ていて、 ここが暗所なことを、 気にも留めませんでしたね、 あなたのお母さんが、 静かに台所で何かをしている、、 僕はその背中を、 遊びの熱からそっと逸れるたびに見…

<1959>「声と左手」

次から次へと鳴り、、 今はどこなの? と、静かに言う姿、、 私はどこか遠くから、 ひとつのしるしを見て、 ふらふらとここへ出てきた、、 どこかから漏れてきて、 私はいた、 私は身体を持っていた、 潜行的になったのはいつからだろうか、、 複数の声が当…

<1825>「無声(2)」

とても巨大なものに常に対していたと感じるのは、私が大人の腰の高さぐらいしかない子どもだったからというわけで、、 そうすると、私のなかの点の記憶も、 実地を辿れば巨大ではないのかもしれない、 ということに、気づくのは嫌ですね、、 嫌だけれど私は…

<1824>「無声」

まだ幾月も経っていないのですか、そうですか、 私はとっくにその時間のなかに紛れて、、 もう劫を経たのだとばかり思っていましたが、そうですか、、 まだこの月日のうちですか・・・ 私はこんな話からものをひらくのをなんといたしましょう、 これは親しい…

<1724>「あたしはただ遊んでいるだけだ」

あたしはただ遊んでいるだけだ、 というと、だいぶてらいがはいるというか、 かっこつけになってしまうので、ちょっと出ないように警戒しているが、 あたしはただ遊んでいるだけだ、 ってやはり口から出るとちょっと爽快なもんだから、言いたくなったりして…

<1723>「暗い日に」

全く軽い手足で持って、 ここへ、一日のありえた形へ、 戻り、、 あ、今はその行先ではないのだな、という、 感覚、しかし、ちょうどこのような曇天で、 皆でバスに乗り、 野球をしに、どこぞの中学校だかなにだかに行かなければならなかった時間を思い出す…

<1110>「ジェットコースターと本と」

午後になる。お酒を買いに行った。 何故お酒を買いに行かなければならないのか、それは分からないのだが、ともかく行った。 ジェットコースターの話を思い出している。強度に関係することだったろうか。 ジェットコースターの上から 男が叫ぶ。 「ベンチに座…

<1091>「ある暑い日に」

大きな風車が浮かぶ、、 野球帽の下に小さく収まっている、 のどがかわく 涼しい、 全然見たこともなかった人たちが今日も生きている、 記憶の蓄積から、机から遠くに来てしまった、 駅はどこだろう、 何を食べている? それにしても何故ここまで晴れている…

<1073>「完璧な一日」

完璧な演技で全てをすっかり騙してしまって、 さて部屋に戻り(お湯を沸かして、コーヒーを飲みながら)、 テレビをつけ、野球を見、 イニング間の弛緩期に、 ゆっくりとほくそ笑むのだろうか、、 (一点取られた) いいや、ひどくどんよりとするだろうと思…

<978>「一枚の絵を運ぶ人」

壁に一枚の絵がかかっている。もう何年そこにかかっているのだろうかそれはわからない。 ひとりの男が絵に手をかけ、そのまま持ち上げると、すみやかに去ってしまった。 たれもがああと小さな声をあげた。 「持っていかないでくれ」 なのか、 「ああ、持って…

<960>「遺骨の夢」

お葬式の在る風景を おひーさんがいつもより緩やかにゆく きゃらあ きゃらあ ぼだい ぼうだい ぼだいおん おんおん ま、さらさら あたしは遺骨 ただの温度と隣り合い転がるのを眺めていた、 煙とともに過ぐ、、 うたぼだい はだしの車、 窓の隅にひととき華…

<856>「Y市と一杯のコーヒー」

Y市は私のなかで、いつまで経っても延々と図像を結ばない町である。 ついに結ぼうとして、徒(いたずら)にY市から遠のき、再び訪れる頃には、香り的な記憶及び断片のイメージしか残ってはいない。 見覚えのあるバスに、訳も分からないまま揺られてゆくと、…

<848>「靴磨き」

靴磨き:靴を磨きましょう。 旦那:何で? 靴磨き:どうということもありませんが。 旦那:あそう。いくら? 靴磨き:へへ。 旦那:へへじゃないんだよ。いくらなの? 靴磨き:いくらでも、まァ、どうぞ。 旦那:何だそりゃ。まァいいや。 靴磨き:靴を買う…

<827>「汽車が見える日へ」

たれかしらかざす声の下(シタ)へひとも知れず潜りこんでいる、その、軽やかな立ち方。 あたしは何に於いて・・・。 ひとくちのパン。記憶のなかに浮かぶ船。照明は等しく揺れている。 電車のアナウンス。風景は行き先を匂う。語らいのなかの唸りをゆく。ひ…

<805>「断片の家のために、地面は笑う」

ついに小ぶりの家は片付けられた。おどろおどろしい、色を巡っての噂や、それは妄想? ついにアけられることもなく。こちらへ迫ってくる、壁か、何か。あたたかいヒ、が隙間から漏れる。 いらっしゃい 私の家はここよ、小ぶりの家は今はもう・・・。あの、窪…

<790>「好悪の芽」

何でこんなことを書きだすのかと言えば、あなたの一番遠くの遠く、その好きの、得意の芽を見つけて掴んでおくことが大事だという話を素直に聞いたからで、素直に聞いたのは随分前で、その時に思い出し済みなのだけれども、今、その時分の辺りのことをくっき…

<639>「一人の男は揺れる<2>」

つまり、区切り方の問題だ。あの男は存在する。ちょうど、家の場所、というか区切りを、2メートルほど横にずらしてしまうみたいな。あなたが思っていたそれは、家ではありませんよ、などと言ってやる。そうして壁の外になる、壁の外にいる。あはは、見えな…

<638>「一人の男は揺れる」

「あらやだ」 歩く、歩くと夫人の前に、これは、なにか? その男は不思議な立ち姿で、微妙に揺らいでいる。 「はて、この人は生きているのかしら?」 当然とは言えない、疑問ようのもの。しかし、その言葉を発させる、なにか。 (わたくしは、もはや生きてい…

<626>「一昨日からの汗」

「いくらでもない、いくらでもない」 先回りすると男はそう言った。おや、俺が教えてもらっていたことのなかでもこれは特別に分からないのではないか。例えば、私には赤ん坊の経験がないんです、などという言葉も、一体どう通過させたらいいか。惑いのなかで…

<176>「視線の無時間性」

その日、私は歌をつけていた。ゲームに付随する応援歌のようなものを。いや、歌は友達がつけていたのかもしれない。可笑しくなって続いた。その楽しみに夢中になる一方、何か幼過ぎるような、似合わないような感覚に陥り、事実そのときは幼かったのだが、今…

<9>「彼(9)」

絵を見ることが私の仕事だと言ったら、大抵の人間は納得しないだろう。見るだけで何の仕事になるものか、そんなもんで食っていける訳がないだろう。しかし、この仕事で食っていけるかどうかは関係なかった。稼ぎを他で持っているからといって、これが一番の…

<8>「彼(8)」

形式を見つけて、それに沿って歩き出す。しばらくこのまま歩いていればいいんだ、どこまででも歩いて行けそうな気がする。赤色の標示灯が、道の両端に置かれ、一定の間隔をあけながら、遥か先の方まで連なっている。 テンポよく歩き続けていると、だんだんに…

<7>「彼(7)」

例えば、得られずにいることを望んで、はあ、と溜息すらついていたにもかかわらず、実際にそういう場面に立ち会えると、何とも思わない、いや、これではないんだと思うことがあるだろう。では一体あのとき溜息までついていたのは何だったのだと思う? その落…

<6>「彼(6)」

為すべきことを見出したような思いに引っ張られ、キラキラと瞳が輝き出すのも不自然だが、そんなものはないと頑張って、輝きを殺そう殺そうと努めるのもまた不自然ではある。では、そのどちらにも傾かないのが自然なのか、自然と呼べるか否か、そんなことは…

<5>「彼(5)」

不遜、あまりにも不遜で傲慢なので、褒められることにもけなされることにも我慢ならない。誰もが羨む好機を見送って放り投げておいて、後悔の念も起こさないと来ている(激しく後悔している様子があれば、まだ取っ組みようがあった)。こういう人物が他人を…

<4>「彼(4)」

彼にもまだ外側を見ていた時期があった。それはごくごく最初期の、短い時間で、ご褒美のデザートが間違って食前に来てしまったような感覚だった。しかし、私は普通の食事を求めている。おまんまとおみおつけと。それで良かったのだ。私は自ら勧んで絵に近づ…

<3>「彼(3)」

隣席の女性は、延々と話を繰り広げている。時々同意を求められるから、うん、うんと相槌を打っていた。しかし、あれだけ喋られて、何の話も憶えていないというのは不思議なことだ。隣席の女性が話している間(数学の授業前だった)、方向音痴な友人のことを…

<2>「彼(2)」

翌日から早速、絵の前に立った。鏡の横にかけておいたのだ。思った通り、どうやら鏡に映る自分より、描かれている自分の方が本当らしかった。これは、俺だけで見ているのは勿体ない。友達にも見せてやらなければと思い、友人を2、3人招待した。絵を見ると…

目の焦点が定まっていない。一体どこを見ているのか。見つめているつもりで、どこか違うところを覗いている。精悍な顔とは程遠く、疲れた頬が、だらりと垂れ下がっている。痩せている、というよりは、痩せさせられているという感じだ。顔が良くないという主…