<1724>「あたしはただ遊んでいるだけだ」

 あたしはただ遊んでいるだけだ、

 というと、だいぶてらいがはいるというか、

 かっこつけになってしまうので、ちょっと出ないように警戒しているが、

 あたしはただ遊んでいるだけだ、

 ってやはり口から出るとちょっと爽快なもんだから、言いたくなったりしてしまうのかもしれない、

 おそらく、遊びにはいくらも近い、

 近すぎるほどには近いが、

 遊びじゃない部分もあるので、

 ただそれだけな訳ではないところに注目したい、、

 

 あの、野球の遠征の帰りなどに、必ず、

 「私は正規ルートの帰り道より、もっと早い帰り道を知っている、だから歩いて行きましょう」

 と言い出す仲間がいて、

 大半の仲間はふんとかへとか笑いながら正規ルートを辿るバスやらなにやらでひきあげてしまうなか、

 「おもしろそうじゃないの、行きましょうよ」

 と毎回ではなかったが参加する少数のうちのひとりに私もなっていたりして、

 そして必ず道に迷っていた(あれはなんだったのだろう)、

 おい、どうすんだよこれえ、おいおい、

 と言い出しっぺに言い出す私を含めた少数の人々はこういった試みにおもしろいじゃないのとついてくるぐらいの人間だから不平を言いながらもどこか皆ちょっと楽しそうだった、、

 言い出しっぺも言い出しっぺであれえとかおかしいなあとか苦笑していたがやっぱりちょっと嬉しそうだった、

 しばらくそういった経験からは時間が経ってしまっていて、

 あれはなんだったのよと、

 つまり、本当に早く行ける道を知っていて、本気で迷っていたのか、

 それとも最初からそんなあてなどなにひとつなくただふざけたいだけだったのかが、

 今は分からないままだ、

 

 共通して持っていた時間から考えると、

 そこから随分新しい時間が加わって、

 各々がもともと別ではあるけどさらに別の時間になり過ぎていて、

 なあそんなことがあったな、

 という話も、どこか頼りなくなる、

 生きてそれが続いていると、過去は夢になる、

 一緒にいた人が別の時間を蓄えてゆくだけではなく、

 私も別の時間を蓄えているのだ、、

 私も、あなたも、変わらないね、とお互いに言った、、

 言いつつ、

 あ、これだけ別の時間を持ってしまっているか、

 同じように会うのは難しい、、

 同じように会おうと思ったら、ひとりでそこまで戻るよりか仕方がない、

 けれど、同じ時間から考えて、随分別の時間を持ちつつだな、

 という形で、頻繁という訳にはいかないけれど、、

 会うこともまた可能になる、

 私は夢になった場面に会おうとして、

 またいずれ夢になるだろう場所を歩く、