<2496>「山手線の興奮」

 初対面のインパクトが大きかったので、山手線に乗る機会があると未だにちょっと興奮してしまう。

 

 中学校の部活で、他校への遠征があり、電車に乗った。

 京王線からJRへ乗り換え、都心へ向かい、それからまた乗り換えをして、が初めての山手線との出会いだったのだと思う。

 

 予定時間に遅れる訳にはいかないということで、多分我々中学生は焦っていたのだと思う。階段を皆で急いで駆け上がって山手線のホームに出たときには、ちょうど電車が出たところだった。

 当時は携帯なんて持っていなかったから、今の電車を逃したことで、一体何十分のロスになったことだろうか、これで試合に間に合うのだろうか、と冷や汗をかいた。

 

 が、電光掲示板に表示されていた次発の電車の到着予定時間は、2分後だった。

「2分後? 嘘だろ?」

私は目を疑った。チームメイトも全員が困惑していた。

 

 今電車が行ったばかりなのに、2分後に電車が来るわけがない。

 何かの間違いだろうと思っていたら、2分後に電車が来た。

 我々は乗った。目的地まで行った。予定時間に間に合った。

 

 その日の試合のことは何も憶えていない。山手線のインパクトが大きすぎたのだろう。

 帰りにもう一度山手線に乗るとき、まだ信じられなくて、次発の電車の時間も、次次発の電車の時間も確かめたが、やはり2分、3分くらいの間隔で電車が予定されていた。

 

 大人になった今でも、電車がそのぐらいの間隔で、ほぼ滞りなく運行されていることに対しては驚愕しか覚えないが、さすがに中学生のときのように山手線のことを知るのは初めてではないし、何度も乗っているから、そこまでは興奮しない。

 

 とはいえ、今でもたまに山手線に乗る機会があると、やっぱり静かに底の方で興奮してしまうのだ。