<646>「温暖な涙」

 「馬鹿じゃないのかしら」

あなたはふと投げて、ここでまろぶ。ちょうど、暖かさだけが涙になり、一切が緊張を伝った。長々、と、眺めたければ、眺むれば・・・いいのだ。昔、見たときと、そう、気にしているだけに、新しい顔が、何度も、何度も、そよ風のそばを掬う。

「うしろの手をあたためているのは・・・」

何故か、歩みが滑る、それも、心地良く。パタパタという、手間さえ笑われる陽気。人も彼も何も水になって、空気をさらうと、ここだけが、いつも、いつも、落ち着いた通り道。

「わざと・・・」

止めたのでしょう。どうしても、眩しさでは足りなくて、分かち、ながら、後で、後でにする。私の番など、なくてもいいから、この滑らかな期待が、いくつものもの解いて騒ぎ出すように。必ずと、言えないだけで、あるひとつの、戻り難い、気持ちの迷い方、どうも、バラバラだと名づけるには、あまりにも踏み出しが、柔らかいので。