路地。 くもる。
慌てて音を出す。
突然雨の意識を持つ子ども。
二人には匂いがする。
眼鏡の隅に小さく映る。
駆け出していく。
明かり、明かり。
呆然とただ陽のなかに入(い)る。
香り、香り、分からない。
傘を振るった。
人、人、地下通路、雨。
微細、微細、分からない。
それとなく触れ、静かに落っこちどおしだったものが、
今に、今に、見えてくる。
並ぶ。
雨の後ろへ、傘を持って。
人、人、立ち上がる。
いつもの曇りを見ている。
かつて軽やかに、この薄く黙った空気のなかを、一心に駆けていた映像。
ひとり、ふたり。
さわがしく、歌はなく。
あなたが同じように生きていて。
扉を見る。 座る。
バスが動いた。
夜を通して、この煙のなかを動いていた。
当たり前の瓶、当たり前のコップ。
疲労感、雨。
さわがしく、 白湯。
絶え間のない活動の穴。
このまま、おじさんや、おじさんや、おばさんや、子どもや、わたしだって、駆け出す先を、忘れやしないという顔で、
流れ、流れ、悪茶碗。
あまりに路地を見ている。
ものが過ぎ、静かに音を立てる路地を・・・。
それから、名も忘れ、仕事も忘れ、忘れ忘れて腰を上げ、ほとつく息、はとつく息。
声が上がる。
傘の中に別の匂いを持っている。
歩いて回るまで、あなたの匂いだと思っていたものを。
日は過ぎ、日は過ぎ、
いつもの姿。
いつもの通り、いつもの水。
1日に収めておけないものを持ち、
夕方は歩く、夜は歩く、雨が来る。
呼気は浮き上がる。
ただここだけが現実を行き来する。
あとは空間の夢。
あとは我を忘れていて。
伸びる、伸びる、 放ったもの。
留守電、留守電、薬缶。
プロ野球の声。
長く、長く、沸騰に身体をはりつけていただけで。
雨が来、ものの陰、冷たく、静かになって、構えている。
次から次へうち、踊るのをそれとなく待ちながら・・・