<1136>「声の薄明かり」

 第一声は過ぐ。

 かわるがわるにじむ。

 いじらしく傾いて、

 ぼんやりとネになる 横になる。

 第一声は過ぐ。

 ひとり 新しい。

 昔の姿形。

 ただ空きマにたたずみ、

 ひとつ、ひとつ、ひきずる。

 眩しさは変な感じがする。

 誰も眩しさに目を留めていないようでもある。

 あまり眩しくて寝ているのだろうか。

 声が少なくなった。

 姿も、膨らみも。

 大きな運動体を無意識に日なたへ、

 そのままで干していた。

 かつて交わした会話をしている。

 風もなく、湿りもなく、

 あるいはちょうどよい大きさのカラスもいる。

 ただの田舎道の行列を想った。

 尋常様に死に、尋常様に集まり、尋常様に鳴いている(それも非難を込めている)姿の、

 いや、今あまりにも眩しいためにこの場所がどこでもよくなった。

 この場所がどこかもよく分からなくなった。

 今ひとつ視線を寄越したのはそのときの説明を済ませるのかもしれない。

 本当は腹の空いた自分をひどく面倒くさく感じているのかもしれない。

 のいっぱらに一杯の風と、眩しさと、無関心を承け、ただひんやりとする。

 明るみにまた明るさを引き出だしてこれを現実とは思えなくする。

 何かを忘れることで遠くまで歩けている。

 ひとの微細な揺れ以外を信じなくなる。

 捨てられたものを何の感慨もないままに拾い、何の感慨もないままにまた捨てていく。

 それから陽、また陽。

 これは想定していた熱ではない。

 これは想定していた姿の熱ではない。

 昨日あからさまに消えたままでいるのかもしれない。

 あるいは、長さは何にも示唆しないのかもしれない。

 こういった形で寛いでいるのはなになのかもまた視線のなさで言えるのかもしれない。

 遠く

 焦げた匂いを現実的と評するのにしばらく時間がかかるかもしれない。

 自明のことのように飛び去り、自明のことのように鳴き、自明のことのようにひんやりして、

 わたしを視線のなさで迎えてくれ。

 香りは長く、

 そこここにまたがり、

 あからさまにぼうとした、その上、

 ここの自明の眩しさ