日の白い紙を読んでいる。
読んでいる、読んでいる。
水と、流れると、傾き、読んでいる。
あなたが 日毎 読んでいる。
読んでいる、読んでいる、読んでいる、読んでいる。
一杯に詰めた籠、隙間、漏るもの、あわい、日陰にしては日陰、、で読んでいる読んでいる。
誰かが繰って、記憶だけ落とし、読んでいる。
読んでいる。
視線を、渦を、揺りを、彼女を、読んでいる。
読んでいる。
読んでいてくれるあいだだけは、読んでいる。
読むどころではない時間に、あやまって日を掛け、読んでいる。
あなたは、読んでいる。
あなたも、読んでいる。
あぁあ、読んでいる。
ところで、男は、ひとりで、夜に、時計を、間違って、掛け、聴き、ながら、音は、音で、揺らめき、揺り動き、溶けて、溶けて、読んでいる。
本当に、読んでいる。
なんだなんだ、なんだ、なんだ、読んでるぞ、読んでるぞ、読んでるぞ、読んでるぞ、読んでるぞ、からまた、読んでいる。
公園で、記憶する限りの夕方で、寛いで、鳥を軽くしたところで、気取って、読んでいる。
浮かれて、読んでいる。
あな、あな、あなしかし、読んでいる。
読んでいるのであるぞ、読んでいる。
すぐさらい、すぐけわい、すぐ戻し、すぐたゆみ、すぐ歩き、すぐ覗き込み、すぐ騒ぎ、すぐ笑いながら、読んでいる。
読んでいることの隙間、読んでいることのためらい、読んでいることの穴、そういった全てを、一枚の感慨に託し、
わたしは、穴で、穴で、穴で、穴であり、読みと、読みと、読みとなり、うつろで、ぼんやりと、読んでいる。
このぐらいの小さな文に、このぐらいの小さな意識を払い、このぐらいの量でやめておくかと思いながら、このぐらいの小さな息をはき、このぐらいの空間で、ちょうどこのぐらいの長さを、ただひたすらに読んでいる。
読んでいる、読んでいる。
読んでいる。
アンド読んでいる。
男は時計を抱え、窓際におもむくと、おもむろに引き戸を引き、新しい呼吸を呟きながら、夜の引き締まった身体に向かい、時計を放り、落下しバラバラになった盤面のなかに、かたまって動かなくなった神経を知り、ひとりで怯え、惑い、ただ囁くように歌いながら、部屋にひきあげ、透明な、透明な、あつい空間の残りを熱心に読んでいた。