<1140>「転ぶ朝」

 追うだけの朝ではなく。

 ためらいだけがまた朝なのでもなく。

 数限りのない仕草の上へ、ひとり寝そべる。

 まだらになっているままで小さな記憶のそばへ浮かび、

 どこを向けたらよいかも分からない。

 ふたひ。 転んでいる朝。

 目が覚めてはそこここに淀み。

 忘れ得ない。

 身体が湿る。

 晴天と、新しい声のなかに居て。

 ゆるめた声のなかに居て。

 ひとしきりやらぐ。

 おそらくは遠い、遠いはたらきを見て、姿を移すように、

 めまえに静かな人がうつるように、

 あるいは感覚の後ろにいつまでもひとつ、名が残るように。

 感覚は晴れている。

 ズドラーストヴィチェ、

 わたしにとってはこれでも朝である。

 時々夜を見て、そのまま帰る。

 もぬけの殻になり、そばにあり、

 そのまま、

 分からないもののたとえになる・・・