<1155>「六月の青い老人」

 ひとーー。ひとーー。

 騒がしい。 蒸れる。蒸れる。

 六月の青い雨、

 蒸れる。

 かく さなぎの中へ、

 かく さなぎの中へ廻り、

 蒸れる。

 ひとーー。

 長蛇の列。

 青い青い列の中の瞳。

 青い青い老人。

 かぐわしくなったろう、身体。

 わたしを結んでおくれ。

 長い長い、あの、長い、逆上する煙で。

 煙突で。

 黙っていて。

 誰にもさらされない口を先端に持っていて。

 先端に立つ。

 眩暈と人。

 眩暈、遠い人。

 

 踊る言葉を積む。

 積載と無縁の人 男の人。

 かぐわしさと無縁の人。

 色事を飽きたまま眺めていよう。

 六月の嘘みたいな青さ。

 子らと埃とカーペット。

 物音ひとつしない住まい。

 

 からからnなってかぼそい。

 どこから来た茶かも分からぬ匂いをさせている人に。

 蒸れる。

 湯が揺れている。

 青い雨のなかに秘密の老人を容れて、揺れている。

 あなたが文字に化けて出きたのかしら?

 からからで、骨を揺らして。

 

 まだ生まれたままで、途方もないままの六月に、ひとり煙をかむせつづく、人、人、人。

 長蛇の列。

 長蛇の老人。

 長蛇の匂い。

 乾期を誘う。

 知らない、知らない、知らない。

 一体何に対して誰のテンポで訪問するのか。

 めない、めない。

 黙想する雨。

 六月の老人。

 ぎこちない匂い。

 

 どこへ運ばれてゆくのか、しかし、最後の姿は湯気であると思う。

 先端は口だけ。

 口から湯気だけ。