<1137>「一度の草、一度の宇宙」

 彼ら、彼らには窓辺。

 不慣れ、あくまでも。

 その不慣れな窓に尋常様にもたれかけ、

 吹きぬ 吹きぬ 眺めやる。

 すると、たった一度の宇宙

 たった一度の宇宙に草がひとりで凪いでいて

 無限回の夕映えにあこがれを等しく映している。

 このまま実にすみやかに、

 ひとり際限のない、小さな紙きれを手にし、

 意識ごと眠っている。

 たった一度の夢、たった一度の宇宙で草を食んでいるいきものら、

 あるいはそのしなやかな身体で水に浮かみ、小さな子どものそばを離れる香り。

 ところどころが欠け、何かをそこに読む人々。

 いつもと違い、ごわごわしている姿。

 地面の繊細な皮膚、かぐわしい毛束。

 分厚い雲は不慣れに流る。

 まだここからの眺めは、たったの一度きりにはならない。

 ためらいのないやらかさと無縁である頃に、

 こうして意識と無限の夢を見て、

 生き物らしく賛歌を駆ける。

 あれは一度の色、

 一度の揺れ、

 一度の溜め息。