口を乗せて、角で待っていた。バスは指を混ぜて膨らんでいった。ある人が声に出す。
「じゅんばん」
「じゅんばん」
乗客は溜め息を漏らす。もちろん、ふたりは続いていた。歪んでいたんで、あたしはそこを抜けるんです。通るんですよ。どうやらあの様子では音に気がつかないらしい。
じゅんばん
じゅんばん?
渡された素顔にはあなたが描かれていた。とてもカアイラしい。あなたのその膨らんだ精神、膨らんだかわき、抱いている子どもが目に入るのよ。
あら、ここは終点になった。人々がバスの外へ、次々に染み出してゆく。困った、私は固けいだ。窓を開けてくれる人がいる。いたずらに素顔だ。誰と間違えているのだろう。道端は拍手だ。拍手だらけだ。
あれ、本当だ私からは以上ですと言うよ。言葉が退屈らしいってんで順に逃げちまったんでしょね。車掌は僅かだ。運転手は五人。その時々で運転席とお近づきになるから、なにやかや、悲しい。あ、そう。嬉しい。あらやだ。私は特別に口を車内へ落としていった。
じゅんばん
じゅんばんだよ
不平たらしく言うんじゃないよ馬鹿たれ。私は急ぐんじゃないか。見てみろ、すると萎んでいって、最後は素早く飲み込んだ。