初めて出会ったものとの結びつき

 好きな歌手でも作家でも何でも良いのだが、好きになっているからには、過去に必ずその人との出会いというものがあったはずだ(勿論実際に会うということではない)。初めてその人の歌に触れた、その人の書いているものに触れた、という瞬間が必ずあるからこそ、今好きになれている訳だ。

 そして、その、初めての出会いをもたらした作品と私との間は、出会って後、特別な関係で結ばれることとなるのが常だ。その人の他の作品群は、初めて出会った作品と私との間に張られた太い網によって後々掬いあげられたものだと言ってしまっても過言ではないぐらいだ。

 勿論、初めて出会ったその人の作品より、他の作品の方を好きになることだってある。後々そちらの方が1番好きだと言えるようになっていくことだってある。ただ、初めて出会った作品とまた再会したときに感じる深い結びつき、胸に迫る言いようのない懐かしさは、他の作品と再会したときに感じる思いの比では無い。出会うたんびに毎度々々旧友に会ったかのような温かさに包まれるのは、初めての作品をおいて他にない。