<356>「この熱からばらばらにひらいて」

 何よりもまず、熱に浮かされているのかもしれない。動くのが億劫なので、同じことが何度も何度も頭の中で繰り返され、静かな音になり、終点を見失ってだんだんに身体が温かくなると、不可思議な眠りと時を同じくするのだ。どうせいつわりの温かさだ。しかし、これが快適でなかったら何なのだろうというもたれかけ。そのまま起き上がらなくてもいいのだと思ってもみない声やら声で届けてみるのは何故だろう。それは無理してでも労わろうという思いか、いや、決まり事の類だ。一度の次にもう一度が重なるのでない、ならば? バラバラに分かれていく作業なのだ。望むと望まないとにかかわらず、バラバラにひたすら分かれていく営みなのだ。

 しょんぼりと収まって、安心して眠る。その記憶にはまだ、私の分からない点がいくつもある。いくつもあるかどうか、試みに数えてみたらよかろう。冷静に考えて、より以上熱いはずなのだ。全てが夢の中の景色だ。例え話ではない。