<601>「人々と誰かが頷いた」

 放られて、心地良い。順番に、現れて抱いて。ここもここも道で良いから。その代わり、足元は熱かった。訴えたくないことまでも、一切が、放り出してくれたから。なんだなんだ、頭ではただ、一度の喜びと白ける折が。珍しい湧き立ちと投げやりなひとこえが。僕はそれを音にするのに手間取った。多少のうろたえと、トコトコトコ見るほんの少しの勇気、いや、もっともっと少ない気持ち、従えさす踊り。

「緊張しているんだ。でなきゃ、あそこまで激しくなれないのでしょ」

おっと、適当だ。驚く奴も、そうでない奴も。どうも、一緒に見られたんでは具合が悪いと言うんだ。

「そんなこと言ったって、皆ここに集まっちまってるじゃないよ」

しかしどうにか願いをかなえたい。あっちでキョロキョロこっちでキョロキョロ合わせてキョロキョロ無感動。くすっ。くすくすくすっ。こうやってバラバラに見たからってそれが何だと言うのだろう。大爆笑はやがて一列となりまたリズムよく出ていった。人々と誰かが頷いた。