もうちょっと待って

 冷静に、かつ穏やかにミスを注意してくれる人達のことを、ことごとくイライラさせていくのが上手い人がいる。仮にここではAさんとしておこう。

 何故Aさんは、穏やかに注意をしていたはずの相手をイライラさせてしまうのか。別に、態度が悪いとか、人間性に問題があるとかいう訳ではないのだ。しかし、ただAさんには、

「注意をされたときの対応」

それ自体に少しばかりの問題がある。それというのもAさんには、

「ミスに対する注意を聞かされているそばから弁明をしてしまう」

という癖があるのだ。

 おそらくAさんは、注意をしてくれている人を怒らすためではなく、

「ただ何の考えもなしに、何の気配りもしないまま、ミスを犯してしまった訳ではなく、こうこうこういう過程があって(ちゃんとした理由があって)ミスをしてしまったんです」

ということを相手に伝えて安心させるために、即、弁明を行っているのだろう。別に、ちゃんと理由を述べることそれ自体は問題ない。注意をしている人だって、

「何故こういったミスが起きてしまったのか」

をちゃんと確認したいだろうし、それらしい理由があってのことだと分かれば、それ以上激しく咎める必要はないなと判断できるだろう。

 しかし、上述したように、注意されているそばから弁明を始めるのは、ちとタイミングが早過ぎるのだ。注意をしている人はおそらく、

  

    自分が注意をする

       ↓

    相手が非を認めて謝る

       ↓

    どうしてそんなことになったのかを訊く

       ↓

    説明を受け、納得する

 という手順を辿りたいのだろうと思うのだが、Aさんは、この手順でいうところの、

「非を認めて謝るタイミング」

で、弁明を行ってしまっているので、

「弁明が、ただの言い逃れに聞こえてしまっている」

のだ。そのせいで、悪気はないのにも関わらず、相手をどんどんイライラさせてしまうということが起こっている。

 だから、Aさんには、

「弁明をすること自体は間違いではないけれども、それを繰り出すタイミングが早過ぎるから、もう少し待ってから弁明をしたら良いと思います」

ということを伝えたいのだが、それは過度なお節介になるような気がして、今のところはとりあえず、何も言わないでいる。