<182>「えい」

 嫌な陶酔、嫌な酩酊というのはやはりあって、それは酒を飲んでいるときを考えれば一発なのだろうけれど、酒以外でもそうだ。自己批判にしたって(勿論他者批判もそうだ)、正義感の発露にしたって、必ず酔いというものが伴っていて、それを感じて後悔するからなるべくやりたくないのだけれども、時々説明したくなる。酔えるということを知っていて動き始めてしまう場合なんかは特に悪い。

 陶酔はそういった邪なものではなく、純粋なものでなければいけない。つまりそれを得ようとして何か動きを為すのではなく(それをすると嫌な酔いになる)、思いがけず、気を抜いているところへふっと訪れる陶酔でなければ。訪れるものを待つものだ、というのはそういうことなのだろう。よって、陶酔状態に予期しないタイミングで入っても大丈夫なように準備だけしておくこと。積極的に引っ張ってこようとしたり、やたらに飲んだりはしない。意外にも、吹く風の温度が丁度良かったという。