<891>「会話体の無時間」

 ふわりと浮いた。風のなかで手が湿っていた。

 私がところ絵、ひとつの会話体、まだしも騒音。

 それは、かき混ぜられた風音(ふうおん)の一呼吸一呼吸。

 私が現実の音(おと)に静かに耳を寄せ、なおも、風となる一連の回答以上のものを見出せないとき、素直に微笑む、深く吸う。私の域(イキ)、の、透明の在り方。そして、場所回転性の、記憶的延長。

 一本の線の上に私の歩行がからかいとして存在する。私は立場者(しゃ)に、憧れつつまた惑いで応答していた。

 いきの涙。私が正体不明のものとして溢れる時間のこと、そのサイズ、その気まぐれ、その、小さな手の動き・・・。

 立ち上がり、は、涙。私は声を、ある空間へとしばし譲っている。その先は凪と、音(おと)がほころぶ。

 かれた「ハ」と、その匂いの置き方で、私は、この呼吸の往復に、きみどり色の記憶を混ぜている。懐かしさが束の間、私のために輪郭になる。

 こトくトう・・・を、覗くと、その、問答無用の行進が、私の目には鮮やかだ。その鮮やかさに、まるで照れることのない、(それを)、なぜか、明日(あした)と呼びたい。

 名前は沸々となるなかへ真っすぐにおりてゆき、染み渡る。瞬間、挨拶にもならない挨拶を発(はっ)す。

 「お前はわたしのその先まで繋がっているのだ」

 と。あるいは、疑問がそのまま場(バ)になり、回転するためにここへ染み通(とお)ってゆくことは不可欠なのだとも、告げる。そこに嫌な仕草はない。訳(わけ)に首を傾げながら、なおも付き合っている。

 またのかたまりを、私と呼ぼうとする・・・と、粒は粒になる。