<73>「後悔は甘美だ」

 後悔は甘美だ。ある一点を変えられるとしたら、どれだけかいいだろう。そういう思いを浮かべ、きっと本当に戻れたとしてもそのことを望んでいた訳じゃなかったことは、どんなに鈍くても戻る瞬間には分かる。あそことあそこの思わしくなさを捕まえて、変えたらいくらも良くなると純粋に考えること、ひとつの陶酔、その柔らかさ、快いツボを刺激するような痛み、確かにそこが変わっていったらいくらか明るさが増す、だろう。しかしそこが変わってしまったことによって、より悪く、いやもしかしたら最悪になっていた(何と比較して? 現在?)かもしれない。そして、無くなる甘美、その後悔。浮遊しているものは浮遊せねば良かったと夢を見る。しかし、のべつではないだろう。飛ばない心地良さ、そして煩わし。同じことを繰り返す倦怠、そして一定のリズム、それは過去の一点と現在とで何か差が・・・。過去ならば二回目になり、現在なら一回目であるからそれならまだ現在の方がマシだと考えるのは、無邪気か否か。微妙に色彩の異なる何千回目であるとして、全く同じではないにせよ違うと言い切って、そして・・・。