また声だ。
隣には産声。
もろとも、長い、長い。
ひとりで遠のく。長く影であればと思った。
私は出なくなった。
まるで何事にも応えなくなった。
そのとき、回転体、月は、途方もない音になったと言う。
わたしは口を開けていた。
どこからが自分の声で、どこからが外で聞いた声なのかが分からなくなる。
燃える金閣寺が映る。
池に、水のなかに、ひどく無感動に、そのままに映っている。
1対1のアンバランスな時間のなかに居て、ひとり安心している。
声が違ってきた。
私は自然に出るだろう。
もとのもやいだ気持ちが薄く剥がれかけの皮のさまをし、ふと浮くように離れていく。
突然に語り出した。
声の表面にはつめたい色がさわっている。
音声(おんじょう)、あなたが懐かしむ声だ。
時に雨水。
時に飽き足らぬさま。
まるでたくましくなった空気が辺りを選むこと。
嗅ぐ。 嗅ぐ。
今では二人で誰かと過ごしている。
路上 無防備で 声のそのまま置かれてはいないこと。
不似合いだ。
あるいは声の場所ではない。
私は出なくなった。
あるいは長らくこうしていた気がする。
目であり、目であり得るもの。
浮かむ。 浮かんで、全てに映る。
等しくカラの容器、等しく全ての声。
長くは不思議に移る。
円い運動。 円い続き。
誰かがそのまま声になれば良かった。
通じるとおもうこと。
疑う声のないままに、疑いがあらわれ出ていること。
あれは全てのためらい。
人がただ訳も分からずに産声を上げる。
私は緊張していた。
このようにして二人でいさせてもらえば良かったのではないか。
集団の声。 集団の揺らぎ。
ただ訳も分からずに私は静かに明けの明星めく。
ゆるやかな声の狭間に真っすぐな水面が進む。
ほっと息をつく。
ふとした言葉にまた薄く停止が入ってくる・・・。