<1119>「普通の顔が入る水」

 また普通の表情が出来たら。

 そのことだけを考え、小さく身体(からだ)を折り曲げる。

 そして朝、そしてすぐ紛れる。

 一切が音へ、一切が他者へ流れ流れてゆくにつき、小さな鐘を叩き、静かに座る。

 わたしはこの川に半分だけ身を浸している。

 そして朝、そして鮮やかな流れ。

 そしてためらいはじめること。

 同一存在は声に夢中で、今ここ、わたしの視線からは去る。

 そして冷たい水。

 そして僅かながら挟まる石。

 なぐさみから滑り、抜けて、なにとなし巡る歌。

 勢いがよく。

 なほうへ子どもらは指を差す。

 声だけで割れて。

 誰とはなしに紛れてゆく。

 そして朝、そしてどこまでも垂れる。

 ありふれた仕草で色を見、

 窓を見る。

 用意がよく、満ち足りて、

 離れない。

 そしてひとつの顔。わたしが指を差さないもの。