何の根拠もないのだが、自分も含め、若い人間の顔を見ると、
「嘘の顔」
あるいは、
「偽物の顔」
だなと思ってしまうところがある。それに比べて老人の顔は、肌のハリ、ツヤがなくなって、皺こそ圧倒的に増えているかも分からないが、それでも、
「本当の顔」
だなと感じられるところがある。
別に、若い人間の顔も決して嘘ではないのだが、何か顔自体が、居所なくふわふわと顔の上をさまよっているような感じがして仕方ないのだ。ただつやつやとしているだけの、頼りない顔。私は自分の顔を見て、その若さのあまりにそれを、
「醜い」
と思うことすらある。ああ、なんていう顔をしているのだろう、と。