<909>「ことの朱のはじめ」

 くるい、うたを得(ウ)、い、くるい・・・。よくは知り、日の、繰りのなかへ、綺麗なものをゥ、染み、訪ねいわば、真新しさ、のなかへ、縒れる、淀む、淀む・・・。

 よゥ、よゥ、ビ、人(ひと)は流れ、語らいは喉を言(こと)に染め上げる。朱色の叫びをひとり目にする・・・。

 身(ミ)ィ、は、映え、ものは、狂い、干し、膨れ面の身体(しんたい)をほどいてゆく。絢爛たる身(ミ)、生き生きと、ゆく、また、手の振り、見事に溶けて、私(わたし)のところで初めて風になる身体(からだ)の、あまりの揺らがなさ。ひとりで撫でている、と、する、ノ、は、よそのそぶりで。

 ただ湧きたがっていた夜にひとりで増えていって、誑かされたひとひらの言(こと)を掬っている。たれかが静かに戸をひらく。われは息を忘れる。

 ぼゥとする温度のなかへ舌を転がして、言(こと)の残りを磨いてゆく、と、ふっと息をつくの、は、華やかな、そして小さい光。訳(わけ)もなく静かに沈みゆく・・・。

 色とりどりの混乱のなかへ無言で招待され、とにもかくにもひとつのステップで応えるとき、驚くほど自由だ。いや、人(ひと)は正確に、まさに驚いている。

 文(ぶん)をゆくの、夜(よ)、もよい、揺れに揺れて、まだ確かな、人(ひと)の背にうたいを乗せてゆくと、あきらかなトオンの眺めが、わたしの目に鮮やかだ。日々は文(ぶん)を縒っている・・・。

 照らされ、また、かげを失い、人(ひと)、人(ひと)が無の眺めで同じ言(こと)を同じ仕草で乗せるとき、ひとりの男は渦を巻きぐるぐると溶けて消えかかる・・・。わたしは言(こと)とともに緊張している・・・。