怒りのあらわれがある。それが適当な誰かでも、私でも、ひどく困るものだな、と。なんせ、渡ってゆくことに理由がない。
橋をこちらへ渡ってきた人が、ニヤニヤ笑いを私に向ける。私もニヤニヤ笑いを返す。やめどきを見失うなどする。そばで、ひとりの男が、遠くを見つめるのだろう形で、静かに座っている。
「ためらいながらでなければとても向こうへはゆけない・・・」
と言っていた。話しかけられたのかどうか、しかしその通りであるので、小さく溜息をつく。
驚き、大げさな声がスムーズに通る。
このまま絶えてなるものか
でなく、
私たちは絶えることなどありません
と響いていた。いやにいつまでも聞こえていた。この瞬間、このままでは耐えられない、と思うと同時に、はて一体私は何を耐えているのだろうか、とも考えた。まるで抗わないで、後ろを振り返りつつ、首を傾げ、あくまで進んでいた・・・。