私だけの口。
口、改めて吐き出す。
わざとらしく、汚れて増えて、ひと口。
ひと口のうちで一番尊いもの、悠長な夢。
口だけで出さずにはいられない。訊ねたがりのふるえ。
口々になら、言えるこころもあって、口と口ではふさがらない。
態度でだけ、口と態度でだけ、あたかも中心に見える。
ふたつごと、口ごと一緒に飲み込んでしまおうか。
口に、なにとはなく応えて、ひと口、みくち、おそばで行儀よく、口数もものの数、出鱈目に増えただけ。
口から溢れてたれの目にも触れる。赤い、赤らしい、赤らしくいやらしくなぞなぞ、人肌をゆっくり撫ぜるなぞ。
とてもとてもと縦になる。またまたまたあと横になる。口になる。生涯で一度だけ口になるはずの、あなた。
私だけの口。
口、ふざけながら編み出す。
ここははやく、破れて枯れて、ひと口。
ひと口のうちで一番尊いもの、酔狂な癖。
口混ぜて貸さずにはいられない。まねたがりの抱え。
口々になど、触れる子どももあって、口と口とで飽き足らない。
感度でだけ、口と感度でだけ、あたかも今はふいに見える。
ひとつごと、口ごと一緒に噛みきってしまおうか。
口々に、なにからなにまで渡して、ふた口、みくち、起きれば機嫌よく、口角も泡の数。一度目で見てただけ。
口から別れて彼のことに気づく。若い、若いらしい、若々しくいやらしくなどなど、ひとごとでゆったりかかるなど。
とてもとてもで嘘になる。またまたまたあと本当である。口になる。将来に一度だけ出会うはずの口、それがまた。