呼吸が、上手く出来ない。
過去は関係ない。そんなものとは関係なく、今を生きることができるんだよ。
全くもってその通りだ。
過去がどうであろうと、あなたは今から幸せに生きていいんだよ。
全くその通りだろう。
だが、あった過去を殺し、なかったことにし、スルリと滑り出てきて成り立たせることの出来る、普通の、幸せな今とは何だろう。
居たはずの人がおらず、居なかったはずの人がいる世界で、普通の生活を送れるということは、一体どういう種類の、どういったことを指すのだろう。
過去はどこまでもついてくる。
それが、身体の世界にいるということで、身体の世界を完全に離れたビジョン、景色を夢見、成り立たせられるように思えても、そこは、遅かれ早かれ退散しなければならない場所となる。
私の身体との、繋がりが何にもないからだ。
普通に生きるということが、想像出来ないのではない。
普通に生きるということが、あらゆる意味で、身体的に不可能になった場所から、生を始めなければならない、ひとつの、いや、複数の生があったのだ。
私は全てを振り払いたかった。
全てのものを振り払って、普通に、自由に生きたかった。
でも、私は皆と同じように、替えの利かない身体だった。
全てを引きずる身体だった。
そこだけは、何故か周りの人々と平等だった。