<2225>「生まれたばかりなのだから」

 生まれたとき、あなたには何もない

 周りには全てのものがある

 あなたが生きていると、あなたには風が出来る

 水ができる

 泡ができる

 そうして周りのものはひとつ、またひとつと

 確かに消えていく

 あなたがひとりで空白の地点に立っているとき、

 あなたの周りには何もない

 

 だから、私はここにまた生まれたと言ったのです。

 こんな静かなところだとは思わなかったけれど、

 ともかくもまた生まれたのだと、

 数々の、線と泡を持って、

 ここに生まれたのだと。

 私はひとつも泣いていません

 泣こうともしていません

 私は例えば牛肉を食べています。

 生まれたばかりなのだから、それは当然です、

 あなたは例えばかぼちゃを煮込んでいます。

 だって、今生まれたところなのでしょうから

 それはそうなのです

 

 こんなに静かなところだとは思わなかったから、

 私は私の声をさしてみています

 静かな風景から巡るように

 わたしは自分が血であるとちっとも思わない

 おそらく泡かなにかでしょう

 だからあんなに気持ちよく眠っているのです

 ここが始まりの地点だとも知らずに

 

 先へ、うんと先へ来ました。

 ものに、一度、また一度と触れてみます。

 生まれたばかりなのだから、それはそうなのです。