<2411>「NewJeansが相当面白いってことを」

 どうしても言いたいという気がして。

 

・デビューしてから4~5年くらい経った?(これがスタンダードなのか?)

 何が面白いって、2022年の7月にデビューで、まだ半年くらいしか経っていないのに、もうデビューしてから4~5年ぐらい経ったのかと錯覚するほど、MVが大量に存在することで(確認した限りでは今まで出した6曲全てにMVがあり、しかもいろいろなバージョンがある)。これはおそらく相当お金が掛かっているし、時間も掛けているのだろう。半年前にデビューなのにいつ準備されたのだろうと思って、調べたところ、プロデューサーのミン・ヒジンさんは2019年ころから準備していたらしいと知り、そりゃあそうだよなあとなるなど。とにかくすごいボリュームだ。

 

 それで疑問に思ったのは、これはKPOP業界のスタンダード、つまり当たり前なのかどうかということで、そこらへんは詳しく分からないので何とも言えないのだが、もしこれぐらいの分量が当たり前なら、KPOP業界自体が凄まじいし、そうではなくて新しいスタンダード、つまり当たり前でないことなら、これはNewJeansが大きく成功してトップランナーになった日にゃあ、この後に続くグループにとっては相当高いハードルが用意されたぞ、と思うなどした。とにかくすごいボリュームだ。

 

・名刺代わりの曲を作らない戦略なのかどうか

 それがデビューシングルでなくとも、出たてのグループには名刺代わりとでも言える曲がある。例えばKARAなら『Mr.』、少女時代なら『Gee』、TWICEなら『TT」などなど。名刺代わりの曲を持つことにはメリットもあればデメリットもある。よく言えば憶えてもらえるし、悪く言えばそのイメージに固定化されて身動きが取りにくくなる。

 翻って、NewJeansのデビュー曲は一応『Attention』になるみたいだが、ほんの2週間くらいのあいだに、4曲も発表されていて、そして前述したようにその全てにMVがある。

 これは、名刺代わりの曲が生まれることによるデメリットを、あえて避ける戦略なのかどうか、別にそんなことは全然考えていなく、そのなかから人気が出た曲を名刺代わりにしていくつもりなのか、そこのところが、いまいちはっきり分からなくて面白い。

 

・曲の多様性

 それぞれの曲も、何かそうやって、イメージの固定化をさらりとかわすかのように、スタイルが多様なのだ。

 

1.朝っぽい爽やかな『Attention』

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 前述のようにこれがデビュー曲で、聴いてもらえると分かるのだが、爽やかで、現代の流行をおさえるようにラップが組み込まれていて、いわゆるオーソドックスな、分かりやすく乗りやすい曲という感じ。(誰の何との類似を感じているのかは分からないのだが、MVがどことなくavexっぽいと感じるのは私だけだろうか)ああ、なるほど、こういうコンセプトで始めて行くんだな、と思っていると、すかさずほんの1週間ほどで、『Cookie』みたいなスタイルの曲がぶちこまれる。

 

2.夜っぽい、不穏で不気味で甘ったるい『Cookie』

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 これ、この曲。私は一番好きかも分からないが、とにかく不穏だ。そして甘ったるい。どこにも爽やかさがない。

 曲中のフレーズである「Cookie」が、決して長すぎはしないが、再生機器が壊れたのではないかということが、微かに頭をよぎるかよぎらないかぐらいの絶妙な長さ、引きのばし方で、なんとも気持ち悪い(もちろん良い意味で)。

 それから、1分32秒ぐらいに、この不穏な世界観にはおよそ不似合いな、ダニエルひとりだけの、ちょっと間の抜けたコミカルとも取れるダンスが急に差し込まれる。そして誰も同じ振りはしない。それがまた不気味さに拍車をかけている。

 それで、この曲だけに限らないが、振付を担当している人がおそろしく優秀な人なのだろう。3分15秒くらいからの、全員揃っての跳ねるような振りは、おそらく立って行うと、いわゆる「はしゃぎ」になってしまってこの不穏な世界観を壊しかねないのだが、皆が座っていることによってそれが抑制されて、ちょうどよくなっている。ここはすごく面白い。

 

3.夕方っぽい、ダンスのアーカイブみたいな、圧倒的に切ない『Ditto』

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 私はダンスの歴史は詳しく知らないので、正確ではないかもしれないが、多分『Ditto』で行われている振りというのは随分古いものも沢山含まれているような気がしていて。ダンスの歴史のアーカイブみたいな作りになっていて面白い。

 数多ある他のKPOPのMVを見ていると、挑発的なというか、「どうだ、私を見ろ」というスタイルが多く、それはそれでとても魅力的なのだが、この『Ditto』は反対にそういう空気感は全くなく、「こういう踊りがあるんだけど、ちょっとみんなでやってみない?」という精神が全編を貫いているように見える。それが新鮮だった。

 そしてこの曲の、本人たちは明るくてとても楽しそうなのに、どこまでも圧倒的に切ない感じが、『パーフェクトスター・パーフェクトスタイル』や『SEVENTH HEAVEN』などの、初期のPerfumeを彷彿とさせて、そういうものを聴いてきた人間にとってはとてもグッと来るものがあった。

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4.ダンスはキレキレなのに、上手いこと力が抜けているように見える『OMG』

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 これもこの曲だけに限った話ではないが、ダンスは割と激しかったりするのに、曲の成せるわざか、本人たちのポテンシャルか、おそらくその両方なのだろうが、全く力んでいないというか、良い意味で脱力感がある。これは技術がないと出来ないよなあなどと思ったり。

 

・本人たちの技術の高さを感じられる動画

 ダンスなどでは例えばこういうの

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 歌などでは例えばこういうの

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2分40秒くらいの、ボーカル然としていない、友達がカラオケで合いの手入れているみたいなパート良いなあ。

 踊って良し、歌って良し。

 踊りについてはよく分からないけど、歌は相当程度才能が物を言う世界なので(元々歌が上手い人がそうでない人に追い抜かれる例ってあまり見ない気がする)、歌に関してはこれだけのメンバーを集めてきた人がすごい。

 

 ・今後のこと(短くやるのだろうかそれとも長くやるのだろうか)

 デビューしたばかりというのはイメージが固定化されていない(しかもNewJeansに関しては意図的にイメージを固定化させない戦略を取っているようにすら見える)ので、いろいろ実験的なものが出て来て面白い。しかしまあ、これだけのボリュームを半年の間に用意しているのを見ると、気になるのは、今後の流れで。

 

 プロデューサーのミン・ヒジンさんは、はたしてこのプロジェクトを、どのぐらいの期間を見据えて行っていっているのだろうか。

 この勢いのまま行って主要な作品は2~3年ぐらいで全部出し尽くしてしまおうと考えているのか、それとも最初に多様な方向に曲を持って行っておいて、そのなかから上手く馴染んだものを選び取り、そこからある決まった方向を持って長くやるつもりなのか、それともこのままいろいろな方向性を持ったまま、ひとつところにはとどまらずに捉え難い存在として成立させ続けていくのか。

 どこかのインタビューでそういうことにも応えているのかもしれないが、まあ先の流れというのは諸事情に左右されまくることでもあり、そういう、先の不明さみたいなものがあるのもこのグループの面白さになっている。