名前のない男の人は、
物語を失って
どこから来たろう。
ここでも当たり前に、
全ての人と過ごした。
永久に名前を失ったまま
全ての人と過ごした。
それは私も知っている季節に違いない。
けれど、
あなたは名前を失って、
故郷から漏れてきた。
から、から、から、
私は、かわいた響きのなかで、
あなたの時間を受け取る。
うん、
あなたは生きそうだ、
私は声を掛ける。
だから、
さびしい笑みを返してください。
端の端の、そのまた端へ来ましたね。
あなたは同じ目をするのでわかります。
あなたは同じ呼吸を持つのでわかります。
あなたは全ての人のように静かだからわかります。