<1931>「水が生まれる前」

 端にあるその手に触れ得たのは何だ、、

 あたしは、時刻から、興奮から、、

 そのあなたの隙間におりてきて、

 なにがこの全景のなかにさわいで、止まないのかと、

 静かに声を掛ける、、

 時刻があり、

 当たり前に垂れてくるひと、

 ここには、呼吸しない、、

 なじんだ陽のあたたかさもない、、

 くぐもったなかをなにか手から出る粉を、粒を頼りに、、

 じりじりと先の方へ来るだけだとかきく、、

 それだけだとか言う、、

 

 私は身体の回転に芯を置いた、、

 はて、はて、、

 よくそこに通る声の狭間に、、

 共に、心線が張り、

 振るえて、、

 いまかいまかこちら、とひとりわたるもの、

 おい、

 そこから見る景色はどのようなものか、、

 ただ端にのぼせてもらいたい、、

 私は水の中にとけた、

 時間の中に、油が浮いて、、

 それを、眺め、

 流れるままにしておいたのだった、、

 あなたが描いたのは流れが油だったということなのかしら?

 ここには生きた人の痕跡が満載になっている、

 私は水に指をさしこみ、、

 ただなかへ、

 あるかなきかの通路を作り、

 静かにはいりこんでいた、、

 どこまで、

 ひょっとしたら、生まれる前まで、

 あなたのその、

 水が生まれる前まで引っ張っていってくれるのかしら?

 なんて、、

 ひとりでどこまでをさすきだろう、、

 

 あたしはこの原に置かれたひとつの印字でした、、

 くさはらはあたしの小さい身体をもう文字として見ただろうと思う、、

 振動で黒さをあらわにする、

 あの文字は、

 その箱のなかでの振幅が、、

 今のそのあなたの一音の複数性を作っているのだとしたら、、

 あたしは喜ぶより先に、、

 この出来事のなかにあるさわぎのかたまりに、

 直に手をつけていようと思うのだ、、

 た、た、つめたい、、

 これでどうさわぎをなすのか分からないほどに、、

 しかし私は熱を放ち、

 文字たる身体を濃くしている、、

 ふぃ、ふぃいど、ゆあ、身体のなかの液、、

 あたしはたくみではなく、、

 その轟音をなすひとつの歩であると言う、言う・・・