<1126>「燃焼はあたしのです」

 とても長い声だった。

 それは地下通路でも、駅のホームでもある。

 反対側を向き、

 それはあたしのです、取っておきましょう、と言う。

 右のポケットはいまや消えてしまう方角を眺めている。

 身体を動かす理由もなく、ベンチにいる。

 とても長い長い声。

 どこか近場へ、折り畳まれた快活さも一緒になって、喉元を探る。

 ただの広間。

 かちくりぱちくり燃えているもの、折れていく木の枝と、全ての好奇心。

 全てのひとり言。

 その燃えているものはあたしのです、ひとつ取っておきましょう、

 と早々に言って、反対側を向く。

 右ポケットは素直に歴史を探していた。

 あるいは落ちているものを拾っていく。

 片方では足りない、片方では足りない。

 お前が全部と承知したんなら、より疲れるようにしよう。

 しかし、わたしはどっちらけの好奇心だった。

 早い、

 全ての好奇心が、

 掛けた言葉が、

 右ポケットから真っ暗なイメージを取り出し、わずかにくわえている、

 あるいはひとつにまとめるということを、あまりにも簡単に考えていたのだとして。

 線のことを考えようとして。

 途切れる。名前も、そぶりも。

 ただひとつまた取っておくとしたら、

 それは信じているのでもなく、諦めていないのでもなく、まだ見ていたいのでもなく、、

 ただの行為なのだというところへ帰るだろう。

 いついっか何時何分の記憶に紛れて、

 声も短く、歩道に出る。

 あるいは大きな口がアいている。

 とめどなく過ぎ、流れ、響き、重なる。

 同じトーン、同じ身振りで、まともに見ている。

 ふたつでも、みっつでもよっつでもあり、、

 なにか納得がいかないという顔をされる人。

 しかし、分からないものは分からない。

 必要と、熱と、あやしさと、わずかな起床。

 そのそばにまみえ、

 せすじが新しくあっけらかんとのびている。