<931>「生きる日」

 ふかい水。いきて得(ウ)る音(おと)の数々が否応なしに浮かぶ。

 葉が落ち、透明に冷気の伝う、、細かく震え、何をか告げる、の、として、さて、わたしは僅かな停止で応えるだけの、意味は知らない。

 取り替えるの、上手く膜で覆い、動物だと気づかれる前に、早く早く、先へ先へ、その影へ、えぐみのちらつかぬうちに、何もかもを落としてしまう。

 徐々に徐々に、それはそれは外側へ流れ、まるで生きなくなってしまったものは、そこへ大きく手をひろげ、静かな笑みになり横たわっている。その張り方、その身(ミ)の処し方。

 静けさは、騒乱のなさではない。静けさは、距離的平和のことでもない。静けさは、ただの膜だった。それは蓋ではない。匂いでしかないものへ、あなたを招待する、あなたは微笑みの下(した)を覗こうとする、も、派手な音(おと)が散っているばかりでよく分からない。

 途方もない距離に対して、一個のからだでしかないために、声は、水面の波紋は、華やぎに浮かれた踊りは、わたしの知らないところばかりから出ていた。石の表情に見えたもの、石の態度に見えたものは、ただあなたの知っているだけで。

 ただ揺すられる前は水だったものへ、不意の緊張を強いられ、またたきは全景を疑問に置く。さては、あるいは、時間は回転しているのだろうか、本当はまたたきするマすらないのだろうか・・・。

 ものは動く。無言のなかに座り、間に合わせの壮大な音(おと)へじっと耳を澄ませながら・・・。