<932>「声をなにだ、の場所へ寄越して」

 これがために、僅かの迷いなく、剥かれてく。

 日の浅く差し、かえって自らを意識しなければならないとき。

 たれか結う たれか結う 小気味よく過去は揺れる。

 線はなく 線はなく 左右を確かめ 戸惑いのもとにただの痕跡しか残らない。

 なにだ、のない場所。わたしはここにいる。

 なにだ、のない場所。わたしはここにいる。

 欠けのなさ、を振舞い、疑問のすっと滑り込む道、ひとは声を寄越す。

 遅れて色(イロ)のにじむころ、わたしの全てが過去に見える時間。

 強くもない場所、弱くはあり得ない場所。

 ひといきはステップ。重さの隠れたり、あらわれたりするなかに。

 呼気は打つ。呼気は散る。どこだか分からないところへ、二度三度、不用意に棲んで、短く光る。

 なにやかや、騒がしく、結んではとどまり、結んではとどまりし、少し苦しむ。

 迷うそばからすぐにズレ、おそらくは遠い、簡単に遠い場所が発すると、そこから根(ネ)、そこから根(ネ)を見出し、逆さまの花はわたしの頭上へ垂れる。粉は落つ。わたしは払わない。

 ひとのささやく。わたしは声の隙間、馴染みのない場所へ、そっと腰をおろす。

 おのがごろごろとした響きに半ばは酔(エ)い、半ばは忘れて走り出す。ひび割れたものの無感動にゆく姿。

 姿が小さく、ただひたすらに路面に映り、オロオロと、や、ひどく辛抱し、幾度も幾度も掬っているのはなにだ・・・。