<600>「あなた湧くのよ」

 各々が主張やら主張にならないものなどを発していて、結果的にそこから全体の印象などを得なければらならない。いや、勝手に得てしまっていると話した方がいいかもしれない。つまり、判断を次々に裏切っていっている訳ではない。ならば、これは何なのか。

「これは移動なんだ」

とすら言わないだろう。ただの移動ですらないとすれば、それは目覚め、一度目の挨拶、そうでなければ徐々に徐々に溜まっていったもの。捨て去るなどとは言わないはずのところ。おそらく次から次へと変わっていっているときに、古いものは捨てられている訳ではない(そうだとしたらば、何の縁もない別の場所に移っていなければならないはずだ)。だからといって残るのでもないのだが、

「例えばあなたが真顔であるのだと思うと、いきなり笑ったりするでしょう? そこに疑問はありますか?」

なかった。疑いと言っていいものや、不可解な出来事はここにはなかった。慎重に捉えようとして随分と苦戦しているようではないか。ひとところにそれは集まってゆったりとした空間を作るのであった。

「あなた、湧き上がっていくのよ」