<534>「随分若くして生まれてしまった」

 何処からも見えていない道を通った。

「時間が必要なのだろうか?」

時間は、あってもなくてもいい。何故ならそこに、距離らしい距離もないからだ。速さなどは要らない、速さなどはない。それでも少し、速さを頼むようなところがあったのではないか。

「あったのか?」

「さて、どうだろう・・・」

なるほど、内部空間は若者ではない。私が憧れを、彼らがズレを感じるとすればここいら辺であったのだろう。この細い通路は、全体を見渡していて、身体としては全てのポーズを取り終えたと言える。

「もっとも、取り終えた後でなければ、この時間からの別れを感じることは出来ない」

何かが分からないとすれば、それは、制限によって繋がりが明らかになるという事実である。体験が不足している。体験が不足しているが、増やそうと思って増やせる類のものでもなく、慎重な、眠りと見紛うような進行が時折必要になることもある。

「この場所で、何か焦っているとすれば・・・?」

それは若くして生まれてしまったという焦りだと言える。生まれるにしても、随分と若過ぎたのじゃないか。時間が経過するだけだと言う。しかし、時間が経過するだけで済む瞬間などひとつもないことを感じている。