現実感のないもの(現実にないものではなく)は、いくら集めても満足できないし、不安もなくならない。だから、あんなに沢山集めておかしいのじゃないかと言っても仕方がない、おかしいのは本人だって分かっているはずだ、しかし訳も分からないほど集めないではいられない。さっき不安はなくならないと書いたが、現実感のないものは不安と相性が良いとさえ言える。得体の知れない不安に襲われているときに狂ったように掻き集める対象としては、現実感のないもの程よく似合う。現実感がないからこそ信奉し、信奉したからこそ大量に集めたものが、ついにあんころ餅ひとつほどの現実的な充足すらもたらさなかった。作った人は特に深い意味を込めていなかったかもしれないが、金を食い物で包んで飲み込もうとするシーンは何かひどく象徴的であるような気がした。代わりに食料を(腐るのも気にせず)気が変になったかと思う程沢山溜め込むことはおそらくない、それはあまりに現実的過ぎるからだ。