バランスは油断によって崩れるのではなかった。バランスはどうやっても崩れる。それはリズムのようなもので、常に動いているものでありながら、同一であること、堅固であることを求められる理不尽さ、矛盾具合に、バランスを崩すという事象はつきものである。
油断は、バランスを崩すという事象を自分の中でどう処理するか、というところにこそ関係してくる。といって、バランスを崩したことを軽視することが、必ずしも一大事を招び起こすことには繋がらず、軽視したが為に、バランスを崩したことが結局一大事にならなくて済んだ、ということもある。
油断していた、というところに全ての問題の原因を集結させるのは確かに便利だ。しかし、油断は当たり前の、日常物だ。集中できる時間の方が圧倒的に短い。大半は油断状態にあるのに、そこにこそ全ての問題の原因があると言ってしまえば、ほとんど何も言っていないのと同じになってしまう。油断していても別に大丈夫なように設定するところから諸々は始まる。