<377>「好みの根の深さ」

 好みと、好みでないことがある、というのを忘れる訳ではないが、そういうものが入ると理屈が成り立たなくなるので意図的に外しておく。すると、好みか好みでないかというところに行き着いて、というより、そこにしか問題がなくなって、困るというほどでもないが、困ってしまう。

 理屈で言うと、穴がある、それも随分ある。無理やりにこじつけていたり、思い込みが多分に含まれていたり、というのが、分かり過ぎるほどに分かるが、理屈として通らないからといって何も感じないとは限らないところが難しいし、嫌だし不快だが、面白い。

 生き生きし出す予感とでも言うべきものは、存外馬鹿にならない。そうじゃなくてもいいし、そうでない人が駄目だという訳ではないことが分かっていても。というより、これは何かまた別の問題なのだ。放り出されて危ないとは言うものの、放り出されずにいるのもまた同じくらいに危ないのだから。