<2909>「別時(挨拶の気配をもつ)」

 あたしには、この、

 いくつもの時間の積み重なりが、見え、

 そこから、

 大層な身体と、

 名指される、、

 あたしは、ただ、

 水の行方を指し、

 私は、ここに浮いた、

 過去、ここに浮いた、と、、

 ひとりでつぶやいている、、

 透明な、

 ひとりの沈黙時、、

 あたしの姿がそれぞれ、

 場所ごとに、

 いくらか溶けていることをおもうと、

 からだは、

 深部まで行こうとする、、

 

 まだ、

 あなたは私の名前を、

 知ったことがない、、

 知らないまま、私は、

 走ったことがない、

 身体が、糸になって、

 千切れたことがない、、

 そのまま、、

 水をめくって、

 この過去の先に、

 おのれの姿があらわれたこと、、

 決して、

 間違えて出発するのではない、

 別の時間が、

 特有の、

 挨拶の気配を、持ってくるということ、、

 あとにながれて、、

 あれは解体の日々だったのか、、

 まず内室を作る日々だったのか、、

 からだからさらに先へ、

 さらに奥へ、、

 あたしの時間を、おろしていくことだったのか、、

 

 あたしは、

 からだばかりがほどける場所で、

 ここをとまどい、、

 ここをほうとひといきでほうり、

 小さく蹴飛ばしたまま、

 幾時間も、

 幾時間も過ごしたと思った、、

 この僅かの命、、

 命といえども、、

 どこへのびたらいいのか分からず、

 エネルギイが過剰であって暴れ回っている時期、、

 私の道に、、

 身体のアイデアをもたらしてくること、、

 遠い記憶の世界に、

 小さな水を通すこと・・・

<2908>「あなたの皮膚が記憶したもの、黄金に近いこと」

 形からすべての、

 お前の、その、

 音声の営みが、出てくる、、

 身体破れる、

 お前の試みとして、

 それは、

 あまりにもすさまじい勢いで、

 ここに生まれてくるのだが、、

 私は道の中で、

 かたちを知って、

 そのかたちを吸う、、

 あれは吸いたいだけ、

 記憶も、

 場所に対する意識も、

 全て飛んでしまうまで、

 あなたは吸う、

 あなたも吸う、、

 

 私は、

 見つめる目を、、

 いくつも確かめて、

 そこにいくつもの時刻、

 形としての振舞い、があることを、

 非常に短時間で知りながら、、

 折り込んでいくその素振り、

 からだにながれる、、

 そのたくみな存在の仕方、

 あたしはヒを受けて、

 からだのなかにたどりつき、、

 またきこえつつ、

 あなたは挨拶し、

 あなたは日常に混ざり、、

 からだを作り上げ、、

 順にきこえる、、

 順にこの、

 ものごとのなかに起こる、、

 あなたの記憶や、

 あなたの皮膚が記憶したこと、、

 あたしに順に連なって、

 順にただ、

 からだを分け合っていくこと、、

 

 あたしは泡立ち、、

 ふしぎな無感のなかで、、

 やや黄金に近い、

 しずかな道を歩いている、

 漂っている、、

 どこに向かうのか、、

 あたしはその千々のこまかい毛先を、、

 からだにつけて、、

 ほうとはく息を頼りに、

 どこまでも前へ行く、

 どこかへ着くとも思わずに、

 あたしはあなたに声をする、、

 うん、、

 私には眠りがある・・・

<2907>「『ソウルメイト』」

 アップリンク吉祥寺にて。

klockworx-asia.com

 

 見てきました。

 

 例によって本編に関わることを書くので、これから見る方はお気を付けください。

 

 

 

 

 

 

 

 10代の、それこそ、

「魂が本当にひとつになっている」

ような時期から、20代、お互いの仕事とか生活とかの背景が変わってきて、あのとき魂がひとつになっていた頃の二人を再現しようとしても、もうそれは無理になっていて。

 

 そして、それからお互いに試練を越えて、大分大人になって、二人とも穏やかになってきたな、そうそう大人になるってこういうことだよな、と、現在の自分と重ね合わせながら見ていた。

 

 が、二人はそういう形で、良い大人として、お互いがお互いを尊重し、穏やかに関係を築いていくようなエンディングは迎えなかった。

 

 親友でありながら、全く違った個性を持っていた二人は、終盤になってお互いに奇妙に似通ってくる。

 ミソはハウンのように。ハウンはミソのように。

 

 10代のころ、二人でひとつの魂を作っていた。

 それは、その後の各々の成長の過程で、分離し、違いを認め、お互いに自立するはずだった。

 

 でも、二人は、段々本当に、一人の人間のようになってくる。

 

 別々に存在することなど不可能だと言わんばかりに。

 

 その帰結として、私にはそれがおそろしいほど自然なことに思えたのだが、ハウンが死んでしまう。

 

 皆が違う顔をしているのは、皆が別々の生を生きるためなの。

 ハウンの母は言う。

 

 同じ生を生きようとし始めれば、

 魂を本当にひとつにしようと思えば、

 どちらかの肉体が、消えるところまで、行かなければならない。

 

 

 この映画は、バッドエンドだったのだろうか、ハッピーエンドだったのだろうか。

 私にはその判断が今のところできない。

 

 魂がかつてひとつであって、それによって生きてきたこと。

 ひとつである状態を守りきれなかったのを、本当にまたひとつにするために生きようとしたこと。

 

 それは、人生の、成功や、失敗という枠組みを超えている。

<2906>「奥にはじまるあたしの液体」

 しらないあたしの液体のなかから、

 ねえ、

 あなた何度も生まれてくるよ、、

 からだ巡ってくるよ、

 あたしはどうだろう、、

 色に違いないものを、

 次々に、見ている、、

 次々に、

 からだにたくわえている、、

 自分のからだに、

 なんだ、

 いくつもの線が入るのを、、

 しずかにたしかめて、、

 あたしは泡の中に行く、、

 あたしは明暗の中に行く、

 

 あなたが住んだこと、

 ひそかにこの時刻に、住んだこと、、

 あたしから先に、

 外部に出て、

 呼吸が、

 次々に生まれては、

 また、

 あたらしく流れること、、

 私はしずかな手をし、、

 からだにあなたを任せ、

 また次々に来る、、

 また次々にさわぎがくる、

 わたしは憶えている、

 わたしは怯えている、、

 しずかな映像、

 しずかな身体の畳み方、、

 やあ、

 やあ、

 あなたの実体が、、

 過去、言説、映像とともに、

 ここを呼吸する、

 やあ、

 やあ、、

 あなたは先に見えているの、、

 どうかしら、

 とても分からないけれど、、

 あたしは映像の先、

 ものごとのおこる先、、

 しずかに振るえながら、

 あたしは先にはじまる、、

 

 あたしは奥にはじまる、、

 そのからだの柄の部分を、、

 ひとつひとつしめらす、、

 ひとつひとつの毛並みをととのえ、、

 あたしは現象を吸い、、

 内部でその栄養分を受ける、

 ここから生まれる人、

 ここから生まれた人、

 私にきこえるのは、そういう声・・・

<2905>「あたしの水は幻想時を共有する」

 あたしの水のことをね、、

 ことばにあてていく、

 からだするとね、

 緊張して、

 一本の線になるんだ、、

 あなたがうたい、

 しずかなからだの線の隣に、

 また、

 あたしが流れてきても、、

 あなたはそれを見ていない、、

 からだがはじまるまで、

 それそのものを見ていない、、

 

 私は束ねる、、

 みのひとつひとつから生まれ、、

 しずかにふくらみ、、

 豊富になっていくものから、

 いくつかをとり、

 いくつかをはなし、、

 またさらにそとがわへ、

 そとからいらぬことごとへ、

 事象へ、

 私がひびわれていくのを、

 しずかにみて、

 からだとかさねる、

 さびしい距離、

 さびしい無感、、

 あなたは現実の場所にはじまって、、

 ところどころころがる、

 ところどころ生まれる、、

 生まれたばかりでまだあつい、、

 あたしは暗い穴、、

 穴から液が湧出してくる、、

 あれがのめたらいいのにね、、

 あなたのその必死の眼、、

 あたしもそのなかに落っこってしまいそう、、

 あなたの不思議な眼、

 私は時空をきいている、、

 からだからすればなに、

 からだからきこえるとすれば、なに、と、、

 ひとつ、

 ひとつの存在の量が、

 つぶやいている、、

 

 幻想時を共有すること、

 透明に重なること、、

 まむかいに流れる、、

 からだの針のリズムに、

 存在が、

 少しずつ合わさってゆくこと、、

 あたしはかたい、

 かたいかたい成分を、、

 しずかに、

 ひそかに曲がるように、

 しかもいくらかの強度は保たれるように、

 作っていた・・・

<2904>「からだとけてもう目にすることもなく」

 ねえ、いま、いるのは、

 一体どこだろう、、

 私は隠れている、

 確実に、月日が、

 流れていて、

 私は、うすい、

 からだの膜を取り、

 ヒに透かして、、

 それが、

 あとの時刻に続くのを、

 じいっと眺めている、、

 

 ねえ、いまは、

 からだがあたたまる場所、

 私は、

 月日を見ながら、、

 そっと とけて、

 どこまでもとけて、

 跡形もなくなったときの、

 その、

 時刻を数えている、、

 わたしがはじまって、

 その指もまた、、

 時間のなかに、とけて、、

 からだ、とけて、

 もう目にすることはできない、、

 もう、流れて、

 掬っている、

 掬って飲んでいる、

 からだにあつまったものたちは、

 ここはどこの場所だろうと、

 私に訊いてくる、、

 私は、

 もう少し底の層まで行って、、

 水もなければ、

 声もないところで、、

 あなたのなかに挟まって、、

 少しずつ駆けている、、

 

 言おうとする、、

 いな、

 からだがまだ

 膜につつまれて、、

 あたしは、

 自分の光線が、

 そこここにさすのを、

 眺めるものです、、

 あたしは、不可能な時間には眠っていない、

 ただ真剣であるだけ、

 ただここにかぶる水の音がきかれるだけ、、

 ゆっくり回転する、、

 ゆっくり走る、

 あれでも集まった、、

 あたしのよそおいの、

 つめたい装備のなかに、

 あれでも集まった・・・

<2903>「人間の呼吸になろうとしている」

 あたしはきっとそこへ来るよ、、

 いつも、

 ひびわれているもののように、そこに、

 くるよ、

 招んだのだもの、くるよ、、

 ほら、、

 しずかな水のけはいが、

 しずかな、

 肌の盛り上がりが、、

 そこに来るのに、、

 

 あたしは、

 何かをとどめている、、

 そしてそのとき、

 感情の伝達線を、

 ぐいっと切ってしまう、、

 だれか、

 だれかここに声を出して、、

 あなたが懸命に誘っていく、、

 しらぬ場所から、まだ、

 目覚めたばかりだのに、まだ、

 生まれたばかりだというのに、、

 からだが、

 ずっと長い間、

 しびれたまま、

 停止している、、

 私は、

 懐かしさを味わおうとしながら、同時に、

 しずかに、

 時間をかけて、別れていたのだろうか、

 今はそんな気がする、、

 経過してきたものと、

 しっかり、

 別れの挨拶をする、

 そのことにより、、

 以前よりもまた、

 関係が深くなる、不思議な、、

 二重、三重の時刻のなかにいます、、

 

 あたしは、

 持っているエネルギイを、

 ただ内回転させるのではなく、、

 うっとうしく突き出すのでもなく、

 ただ、

 しずかに外に向かって溢れさすような、

 姿勢に変わったら、、

 生きていることが、

 何度か、

 掴まえられるように、なったんです、、

 これはどういうことだろう、

 私は関係のなかにあり、

 なお、、

 内時の育ちも、

 懐かしさの消化も、ともない、

 少しずつ、

 人間の呼吸になろうとしている・・・