<1699>「私が生きているのは本当でも嘘でもないと思う」

 あたしは身体を持ち上げて、

 そこへ、置き、進める、、

 どこへ移っているか、分からない、、

 ただ目の前には、移れるだけである、、

 移っていくまま、

 身体のなかで、、うん? と、疑問に思われることもあった、

 

 あ、陽が出てきた、

 という、言葉のなかに住んで、気持ちが良い、、

 このまま、どこかへ移って行きたい、、

 私は、自分以外にはなれないものの、

 常の土地を離れていった、、

 常の土地を離れて、

 しかし手には仕事を携えて行く、

 あたしは呼吸が消えてなくなるほどに静かな、

 ひとつの場所に立って、

 静かにさわぐのをどうすることも出来ない、、

 

 生きていると、こんなところへ出ることがある、、

 どうして、

 あたしは線が方々へのびているのを確かめる機会にたびたびぶつかり、、

 ここへひとつの時間を持っているのじゃない、、

 大枠のなかに、形作っていくものが、

 全て経過により、線になると思えた、、

 これは少しぼうっとするな、

 陽に長い時間当たり、、

 手に携えた仕事がやわらかく、さわりのよいものへ変わったのを、ただなんとなく眺める、

 本当のこと、とはなんだろう、、

 話をするところへ、さあ話をしてください、話すとは、本当に話すとはどういうことですか、と迫られるのに似て、

 本当という言葉が苦手だな、と感じる、

 嘘という言葉も、

 それは嘘だね、本当はね、本当というのはね、などは、排除の響きがして、好きではない、、

 

 私が生きているのは本当でも嘘でもないと思う、、

 不思議だという気持ちが絶えない場所ではある、

 あの、子どもの頃に、

 何日何ヶ月この地域にいたか分からない、友達の家へ行って、

 どうしてあんなに暗がりだったのか、

 どうしてあんなに声を潜めて遊んでいたのか、

 いつ頃、どういったきっかけで家へ帰ったのか、、

 それは誰も憶えていない、、

 上手く家の人に話すことも出来なかったし、

 話そうという気も、起きて来なかった気がする、、

 

 そう、私は、話すことをどこかで遮断されたという意識を持っていたが、

 そうではなく、意図したかどうか、この、話す回路を閉じて、別の面の上へ、

 別の響きを立てようと思いはじめていたという方がどうも、正確なように思える、

 何かが遮られた訳ではない、、

 少し、ひとりでゆく時間が欲しかった、