<1572>「私はこの人の声を通過しましたから」

 あたしはそこの呼吸のなかに上手く含まれましたよ、、

 いやはや、

 十二分に染み通って、いるので、、

 いくらもいくらも身体の中を過ぎてくる、

 私はきっと、現実にそこの舞台を踏んでも、、

 なるほど、ずっとここにいたような、心持ちでいるはずです、、

 そうやって、当たり前に、案内されてきた、

 到着地点から、随分と離れるのだから、、

 遠くの遠くの方へ入っていくのだと思うでしょう、

 でも実際には、身体が向いている方は、こちらだ、、

 

 次々に含まれ合う人たちのことを、

 なんだろう、これらの人たちの呼吸のなかに、、

 なんとも普通なのに、違和じゃないの、

 風じゃないの、、

 もうきっとあんな人はいないのじゃないの、、

 という、

 含んだ後でかき乱された空気の中で、

 そのような語り合いが起こる、、

 どうでもこうでも、、

 風の方から言えば、、なにとも鈍いさには違いないだろうけれど、、

 この人は気付いていないだろうが、、

 また随分と層が重なって、

 だんだんその重層の響きが、

 穏やかに深くなるのじゃないの、、

 あたしはそれを演奏してみたくなりましたよ、、

 それぞれにそうですよ(それぞれにそうです)、

 だからわたしはあいだあいだをすばやく駆けるのです、、

 なんて、、

 またではいくぶんか知らず知らずのうちに呼吸を分けて、

 その代わりといっては何だが、

 少しく鳴らせてもらった、というようなところが、ある訳なのだな、、

 

 つまり、重なりの、一番底の方から言えば、

 私は記憶していることの一番古いところだって皮膚なのだな、

 覆いだよ、

 覆いというものの、行き方を、、確かに知っているはずだ、

 そういえばあのあといくらか枚数が噛んで、、

 全く、誰かしら、、

 この人のうたいは微妙に揺れてきている、、

 あれ、あれ、、

 しかし、私はこの人の声を通過しましたから、、

 今またそれが伝わって、

 それは、大部分が同じことなのでしたから、

 あたしはここの呼吸に居たことがある、、

 ここの揺れに、

 という思いが駆けたことでしょう、それは私もそうですから、、

 そうして、まだ、どういうことかは分からないまま、

 新たに呼気を混ぜては縦に走るのでした、、

 うたいの日の姿、

 あれ、あれ、あの人は、、少しく快活に、、

 どこかで穏やかな呼吸の出し入れを、会得したのじゃないかな、

 どうかな、、

 ねえその、重なりの、重なりの、つかねる為方をさ、、

 良くなったのじゃないかな、、