<1268>「何かの香、来て多層」

 周辺に、幾度も身体は畳み込まれて、

 折られ、、

 破片となったものは、

 軽い身体を携えて、、

 案外自由に、案外すっきりとした面持ちで、

 そこいらに転がっていてもそこいらに転がっているとは思わぬままなのだ、

 

 その不活性と、

 熱が飽くまで穴のようだ と言うこと、

 身体から中身を取られ折り畳まれていく、

 その音をひそかに聴いていたが関心を示そうという訳ではない、

 しかし何か私と関係しないことのようでもない、

 きっと、あとのあとまで微音が残る、、

 それによって驚きはしない、、

 

 身体が剥がれていくのとは反対に音は、音の成分を既にもう失いながらぎゅっと小さくなって何かゆったりとした色となって残る、

 私はそれを掬わないでただ黙って見ている、

 泳がせているのでも、泳がれているのでもなく、、

 何か色がある、

 おそろしいことではない、

 から、、・・・じっと見ている、

 ・・・、

 何で多層、

 絡まり合って、、

 もう飛び出していっても、そこに現実はなくて、

 音の成分を失った音だけが、

 声、声の成分を失った音だけが、、

 こっからぼんやりと、、

 私の 空 目掛けて散じるとしている、

 

 この、散じるものの勢いにふっと、 試みにやらかく指を掛けたりなんぞしていると、

 ばらけてこぼれるぞ、

 であれば私はひそかに聴いているだけである、、

 あの、 ひとりで過ぎた日はかたまったイメージとなったまま、

 遠のかずにじ、、・・・ト、くっついて、

 

 今まさに散じようとするもの、、

 常に破片、 僅かに破片で、

 ひそかに軽くなり、

 音も聞こえないで、、

 今まさにあらわれて過ぎる、、

 飾り立て盛り上がった香りのなかに全身で、 ひとつの空洞で、、

 まさに眠り上げている、、

 そんな、一片の声が私をちょっと通ること、

 滞留して、

 あとはただもっと軽やかになって排泄される、

 こんな時日、

 破片の さらに隅の隅に、

 微かな香があって、、

 それはいくひとをも訪れる、、

 訪問はただに聞こえているのだ、