<1200>「あれは裸」

 あれは裸になっている、

 どこへもその真新しさが見えているので、

 普通の日の出来事が明らかに見えているので、

 あれは、少々、裸になっている、

 なんだかとてつもない

 これはただの裸じゃないか、という感じがする、

 尋常当たり前でしょうが、

 あれはただの裸でしょうが、

 

 裸が現れると、

 もう記憶というようなものは取れて、

 ぽかんと、

 まあ言葉をほっていた、

 これはしかし秘密というようなものはありはせんのだろうな、

 どうしてもそれで不思議な気がいたして来ます、

 身体にだんだんと波が伝わって来ましたので、、

 私も同時に裸であることにいたします。

 何ら不明なことはないのですから、

 どこか、不明のところあったればおっしゃってください、

 お前のその長い、、飽くことのない視線を寄せるのは何ですか、

 何にも秘密がないのでずっと見てしまうところがありはしませんか、、

 

 ひょい、ひょい、

 ひょい、

 と、

 当たり前に触れて、

 かなり熱にうたれてしまったと思います。

 だんだんとその姿が実際になってきます。

 あれはしかし裸でしょう、

 まるでどこにひらいていたらいいかが分かりませんが、

 あれは確かに裸です、

 

 当然と、

 当然裸だと、

 あれあたしね、どこか奥の奥の方へあるんじゃないですよ、

 そんな仕方はありません、

 そんなものは知らない。

 この袋みたいになったもの、

 全部そうなんです、

 だから何の仕掛けもないんです、

 そうすると、かえって分からないんですがね、

 かえって何も分からないんですがね、

 

 これはのっぺらぼうですか、

 ただの途方もない現れだと感じられます、

 もうはぐものがないんですから、

 静かに底へ投げ出されていたらどう、

 静かに移っていたらどうなの。

 まだ、そんな顔をしていて、

 いやだなあ、

 こんなにあからさまでなくてもよいのに、

 こんなにどこへも現れていなくてよいのに、

 ただ訳も分からずに、

 この日はずっと裸なんだな、そうなんだ、