運ぼう。線の人が待っている。
見たこともなければ会ったこともない。
この時間はどこかで滲ましょう。
ただ溢れていく待っている。
待っていて、夜に優しく赤く光る。
今夜中なぜか懐かしかった。
とすれば、ひどく揺れて揺れて 変わり、
今からずっと先目掛けてあなたが声を発しても、
きっと誰のことだか分からないだろう。
とすれば回る、回る。
線の人は大きな眩暈だった。
どこからか次々に運ばれてきて、しかし、なんのことだか分からない。
がらんどうの大きな柱なんだろうか。
がらんどうの大きな柱のなかに人、人の声がひみき、点を打ち、またひみきを確かめているのだろうか。
線の人でなければならない理由が分からないと同時に、また回り出す。
一連の仕草を疑い、一連の中身を疑う。
むしろ、線の気配は不都合ではないのだろうか。
なにやら、呼気ばかり続いていくような。
しかし、その横で、また誰かが、後でもいい、と言う。
ならば仕方ない、運ぼう。
線の人。どこに生きているのかも分からないところへ。