<926>「声のなかの雑音、」

 まるで関係のない泡、は弾(はじ)け、ひとのなかに棲む、ひとのなかに棲むの、知らない騒ぎ、騒ぎはわたしに知られないまま過ぎる。わたしのなかで懐かしさが点滅しているうち、知らないうちに過ぎる。

 ものは遠くで鳴る。ザワザワザワザワ、一体何という粒だろう? ひとのなかを訳知り顔で駆けてゆく、あのひとつの瞬間はなんという名前だろう・・・。

 見事なめまいのなかに棲む、、言葉は明るい。あなたがたとともにただのなまの場所へ静かに移ろってゆく、ものは見事に顔を持つ。

 もののあいだへ棲むと、ただ考えもせずに移ってゆくとした、ひとりの波に、ただおそらく泡のあちらこちらで生まれては消えしただろうあいだに、誰かの声が鳴り、振り向いた、さみしく振り向いた、その小さな風が、今頭のなかで鳴っているのだ。

 幾度も繰り返すひとの、横顔が、ひたむきにそのなかへ閉じている目が、ものを上下する。ぶら提げていたものがゆるやかに揺れる。

 あれは、顔のなかで、一枚剥がれたことを知らせる笑みだ。わたしは弁解したりしない。ただもう少し風があればいいと思っていた。

 たれかにぎやかのなかへ顔をうずめてくれ。そしたらわたしの声のピンと張る仕草も様(さま)になると思う。

 揺れているものは酔(え)いだ。揺れているもののなかへ進む。