それは、ヒ、のあたたかさを私の時間へ、私の眼の方向へ揺らそうとするそぶり。
昨夜くだかれたものが、何食わぬ顔をして静かに歩き出していることの安心感。ついに私は、似合いの粒子になって言(こと)の細かい事情のなかへと静かに流れ込んでいたのだ。
よう、と、する。笑みのなかへ、まだ呼び名のないためらいとともに棲む。地面に触れる。
あの、全身の揺れへ。緊張の、静かな手渡しへ、
あ、ウン・・・
誰かのために、ひとつ鳴る。妙に胸苦しさを覚える場面へ、ポチャッ、、ポチャッ、、と、浮かぶ。
私は景色のなかに惑いの青(アオ)‐緑(みどり)を置いた。色(イロ)そのものの匂いへ、あるいは、手のなかの、文字を映す通路へ・・・。
通い路にひとつの振舞い、それが私の別の名としてあらわれ、要素のひとつとなり、性格を決定づけるのに一役買うとしたらば・・・。そこには限りなし、巨大な、大袈裟な口が見えるだろう。
たれかのそばにひとつの水よ、流れるよィ、流れる宵、果てしない会話のさらさらと、そこで油にまみれたひと開閉の、安らいだ姿。あたしへ向けてひ‐らかれたと、その道のはたにいつものごとく並んで座った二人組の空気が揺れる。揺れる。二人組の空気が揺れる。
およそ、なまあたたかくひと筋の水へ、訳(わけ)を離れて触れてみると、私は何とはなしさわがしい地帯の記憶を、ほぼ捏造気味に想い起こすのだった。
「新しさがしぶきとなりただ濡れているしかない場所で」
私の約束は徐々に徐々に巧妙な熱をもってゆく。それが無音表示にならず、ひとりの言(こと)が次々に活動を呼ばわれるような・・・。または大きな、大きな一語。